映画「せかいのおきく」
28日からシネ・リーブル梅田ほかで公開

阪本順治監督(64)の新作時代劇「せかいのおきく」(東京テアトル/U-NEXT/リトルモア配給)が28日からシネ・リーブル梅田、TOHOシネマズなんばほかで公開される。黒木華が江戸時代長屋のヒロインで、寛一郎と池松壮亮が糞尿で商売をする青年を演じる。「循環型社会のルールで、江戸のウンコ話を創った」という阪本監督に話を聞いた。
阪本監督の作品で永年美術を担当している原田満生(57)が映画の発案者でプロデューサー。母体の組織「YOIHI PROJECT」が企画。「良い日を生きる人々を描き、映画で伝えていく」という趣旨に賛同した阪本監督が「自分は啓蒙的な作品は好きではないが、循環型社会の中にあって、江戸のウンコの話なら面白い時代劇になる。江戸時代、貧しくてもたくましく生きる長屋の人達の生活を瑞々しく描きたい」と物語を着想。
長屋で浪人をする貧乏侍(佐藤浩市)の娘・おきく(黒木)が長屋の厠(かわや)の糞尿を取り込み売買する矢亮(池松)と中次(寛一郎)と知り合い、後者と恋をするほのぼの青春編。生活の中で扱われるのは人間の糞尿で、それは下肥(しもごえ)となって畑にまかれ野菜などを育て、やがて人間の腹の中に帰っていく。「その循環型社会の構図は人間が死んだら土に戻って自然に帰っていくという古来からのそれと同じ。『江戸のウンコ』を『せかいのおきく』というタイトルに替えて、黒木さんらに恋物語を託した」
長屋で事件が起き、おきくは声が出なくなり中次への愛をどうつなげるか。中次は矢亮と共にくじけず明日に向かって生きる。「コロナ禍の時代を経て、新しい時代、新しい世界を生きる若者になぞらえた。タイトルにせかいと付けたのはその意味もあるし、僕にとって初のラブストーリーという意識があったからかもしれない。黒木さんは難しい役を上手に演じ、池松、寛一郎両君も物語に乗って面白く演じ、御大の浩市さんも厠のシーンを嫌がらず楽しそうにやってくれた」
石橋蓮司、眞木蔵人共演。映画サイズはモノクロ・スタンダードで7章からなる物語。6、7章が短編として最所に自主製作され、それが配給のルートに乗って1〜5章の物語が足され1本の作品になった。「その間撮影に3年かかった。こんな作り方は初めてだが、ロッテルダム国際映画祭で上映されるなど、世界のマーケットから反響があるのがうれしい」と阪本監督は相好を崩す。

写真は「黒木華さんがおきゃんな役を好演してくれた」と話す阪本順治監督=大阪市北区の中央電気倶楽部

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