「ザ・ホエール」
2023年4月7日から、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条、kino cinéma神戸国際 ほか全国ロードショー2

「ザ・ホエール」で、アカデミー賞主演男優賞に輝いたブレンダン・フレイザー。受賞が決まった後のスピーチも感動的だった。この映画で久しぶりに彼の存在を知った。フレイザーといえば、「ハムナプトラ」シリーズなどアクションもので、筋骨隆々の体とイケメンで売った俳優というイメージで、演技よりも肉体派スターというイメージが強かった。しかし、そういった「アクション娯楽大作」には、次々と若手が現れるので、彼にはだんだん「居場所」がなくなっていった。さらにパワハラ、セクハラにも見舞われ、「忘れられたスター」にさえなっていた。そんな、彼がこの映画で復活!名誉ある賞まで獲得したのだった。
彼を「再生」させたのは、ダーレン・アロノフスキー監督。この人、「レスラー」ではミッキー・ロークを、「ブラックスワン」ではナタリー・ポートマンを主役にして作品も、主演スターも高く評価された実績がある。
この映画でフレイザーが演じるのはパートナーを亡くしたショックから過食症になり体重270キロにまでなった40代。ということで、回想シーンをのぞいて彼がオンライン講座で生計を立て、暮らしている部屋だけで展開。そこに娘や元妻、親友の看護師が訪れてきてくることが、彼の人生が描かれていく。毎回、4時間をかけた特殊メイク(アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞)で、すっかり巨漢になりきっている。劇中には、彼の存在をイメージする「白鯨」(メルビル著)が暗示的に登場する。しかも、バックに流れる音楽も、ゆるやかな海が頭に浮かんでくる、弦楽器をメインにしたゆるやか曲調で印象的。治療を拒み、自分の死期を覚悟する「太った中年男」はおかしさなどではなく、哀しみが漂い、胸に迫って来る。〈覚醒〉したブレイザーは、ロバート・デ・ニーロらと共演する作品への出演が決まっているというが、今後に目を離せないし、これからが本当の勝負だ。
配給:キノフィルムズ
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監督:ダーレン・アロノフスキー(『ブラック・スワン』『レスラー』)原案・脚本:サミュエル・D・ハンター
出演:ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、ホン・チャウ、タイ・シンプキンス、サマンサ・モートン
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