山﨑樹一郎監督の長編第3作
映画「やまぶき」
2022年11月12日から大阪のシネ・ヌーヴォ、京都シネマ、
神戸の元町映画館で公開

大阪市出身で岡山県真庭市に移住し農業を営みながら映画製作を行っている山﨑樹一郎監督(43)の新作「やまぶき」(boid/VOICE OF GHOST配給)が11月12日から大阪のシネ・ヌーヴォで公開される。今年のカンヌ国際映画祭ACID部門で日本映画として初めて上映された話題作。監督と同じく真庭市に移住した韓国のカン・ユンス(43)と、大阪府出身の祷キララ(22)が共演し真庭市でオールロケした作品で、地方で生きる人々の力強さを描いて見応えがある。
ソウルで乗馬競技のホープだったチャンス(カン)は父の会社の倒産で負債を負い日本の真庭市に流れ着いた。採石場で働き、恋人の美南(和田光沙)とその子どもに「もうすぐ正社員になれる」と報告し喜ばれる。同じ町に住む女子高生の山吹(祷)は刑事をしている父親(川瀬陽太)と2人暮らしで、町の交差点で数人のデモグループに入ってサイレントスタンディングをしている。
やがてチャンスはある事故で大けがをして会社を首になり、恋人と子どもに去られ不遇をかこつ。それでも彼は縁で町にある乗馬学校に拾われて新しい生活を始める。一方で学校の恋人(黒住尚生)が自衛隊に入ると言い、山吹は母親(桜まゆみ)が戦場記者で亡くなったという事情と相容れず、また父にデモ参加をとがめられ息苦しい。山吹が生前の母親とネットで会話するシーンが回想され山﨑監督が描きたかったものが浮き上がる。
チャンスが交差点で看板を持って立つ山吹を見て、彼女に近づき声をかけるシーンがある。2人は生活空間こそ違うが、町で生きる人間として心が同調している。チャンスに幸運が訪れることと同時に、山吹が新しい目標を見つけることを願わずにはいられない。青木崇高、三浦誠己、梶浦祐也が共演。
チャンスのカンは実際に真庭市でキムチを作る仕事をしながら演劇活動を続けている。山吹の祷は女優として映画、ドラマ、CMなど幅広く活躍している。山﨑監督は「ひかりのおと」「新しき民」に続く第3作の今作で新たなパワーを発揮した。フランスの故フランソワ・トリュフォー監督の編集技師を務めたヤン・ドゥデが編集協力。
「やまぶき」は昔から「賄賂」のお金という意味があるが、実際は控えめながら力強く咲く花の名前。
写真は「やまぶき」の祷キララ (C)2022 FILM UNION MANIWA SURVIVANCE

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