「SWAN SONG」
2022年9月2日からロードショー

年齢を重ねれば重ねるほど、こまかな描写がわかり、しみじみとした味わい、哀しみを感じられる映画だ。タイトルの「SWAN SONG」とは、「白鳥がこの世を去る時、最も美しい声で歌う」という伝説から生まれた言葉。かつてはヘアメイクドレッサ―として活躍していたが、老人ホームでひっそりと暮らしている主人公。かつての顧客が亡くなり、その遺言で「死化粧」をすることになる。最初は断っていた彼は、しだいに輝いていく…。かつて、「トスカの接吻」(1984年)というドキュメンタリー映画があった。オペラ歌手として活躍した人々たちの実在する老人ホームにカメラを据えて、その人たちが再び歌うことで一瞬の輝きを取り戻す姿に感動した。その想いが再び蘇った気がした。
主演はウド・キアー。1966年の映画デビュー以来、コンスタントに出演しているが、私にとっては、アンディ・ウォーホールが企画・製作した映画「悪魔のはらわた」(1973年)と「処女の生血」(1974年)での〝怪演〟が忘れられない。ふつうなら、彼の年齢(77歳)なら、渋いわき役というところだが、よくも悪くも独特の個性によって、近年は、はまり役(実在の人物)というものがなかった。そんななか、この映画は彼にしかできない〝運命の役〟に出会った。途中に立ち寄った美容室でもらった花の付いたピンクの帽子。おじいちゃんがかぶったら奇異に見えるものだが、違和感なし。全身から醸し出す雰囲気はもちろんちょっとしたしぐさが優雅でオシャレなのだ。まさにキアーにとっての渾身の〝白鳥の歌〟だ。
https://swansong-movie.jp/

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