「ある職場」舩橋淳監督インタビュー
2022年9月9日から大阪・十三の第七芸術劇場で公開

実在したセクシャル・ハラスメント事件に基づき、その後日談をフィクションとして再構成した映画「ある職場」(タイムフライズ配給)が9月9日から大阪の第七芸術劇場で公開される。オダギリジョー主演の「ビッグリバー」(2006年)のほかドキュメンタリ―映画「フタバから遠く離れて」(13年)などを手がけた舩橋淳監督(47)が新しい手法で撮った劇映画である。
大阪府生まれで東大卒後アメリカに渡りニューヨークで映画を学ぶ。「9・11同時多発テロ事件でショックを受け僕の創作の原点になった。東日本大震災後に福島・双葉町でドキュメンタリーを2本撮った。その後、劇映画、ドキュメンタリーの両方に挑戦しながら日本のトランスジェンダー問題にぶつかった。実際に日本の銀行で起きたセクハラ事件を知り取材しながら新しい手法で映画化することを考えた」
日本は国連によるジェンダー平等ランキングでは世界120位と先進国で最下位。ハラスメント件数は年間8万2797件で毎年増え続けている。「中でもセクハラ事件で被害者の女性がそれを言い出せない人が多く、訴えても日本社会に蔓延する同調圧力の空気で被害者を孤立化させていく。実際の被害者、そして周囲の人々を取材して、十人十色の声があった。それをどう映画にするか」
「ワークショップの形で多くの俳優を集め、被害者の女性を主人公にして、ほかの周囲の人物を個々に割り振って10数人を選び、脚本なしで、俳優全員と僕がセッションすることで状況とセリフを作って撮影することにした。当然、セリフがたどたどしく、生々しくなったりする。フィクションだけど、撮影はドキュメンタリーを撮っているような感覚。主人公を演じた平井早紀さん(29)は大変だったと思う」
会社で事件が明るみになって、被害者はネットのSNSで名前と写真が晒される。周囲の社員数名が彼女を励ますため湘南の社員用保養所への小旅行に誘い会社でどう働き、いかに暗い空気に対処していくかを話し合う。「男と女ではセクハラの感じ方が違うし、それぞれに考え方がある。前向きな意見も被害者にとって無理ということも多く、追い詰められていく。それぞれの善意、思惑、そして悪意。そのため被害者を慰め守るはずの小旅行がバラバラに…」
どうしたらいいのか。「映画を見て考えていただきたい」と舩橋監督は訴える。次回作は同じスタッフチームで作った元受刑者の社会復帰を扱った作品「過去を負う者」。双葉町のシリーズ3作目も制作中。
写真=「本音でぶつかるとどうなるかを描きたかった」と話す舩橋淳監督=第七芸術劇場

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