映画「コンビニエンス・ストーリー」
2022年8月5日からテアトル梅田ほか全国公開

今年「大怪獣のあとしまつ」で話題になった三木聡監督(60)の新作「コンビニエンス・ストーリー」(東映ビデオ配給)が8月5日からテアトル梅田ほか全国公開される。成田凌(28)が山奥のコンビニに迷い込み店員の前田敦子(31)と出会って繰り広げる悲喜劇。「異世界の入り口で展開するファンタジー」という三木監督に話を聞いた。
前作「大怪獣―」は松竹と東映が配給した珍しいメジャー作で、関係者は東宝に「こんな怪獣が出るがよろしいでしょうか?」と挨拶したという。結果的に「ゴジラ」などの怪獣ファンからブーイングが起こって賛否両論飛び交った。「これは怪獣映画ではないという声と、私はデビュー作から喜劇的な作品作りをしているので、作風を分かっている方は納得してくれた」と振り返る。
松尾スズキ、オダギリジョーが主演したコメディ映画「イン・ザ・プール」(2005年)がデビュー作になっているが、実は「ダメジン」「亀は意外と速く泳ぐ」という2作をその前に撮ったと明かす。元々はテレビでタモリやダウンタウンの番組の構成作家で、ドラマは「時効警察」シリーズの監督を務め、シティボーイズ主演の短編「まぬけの殻」を手がける多才派。「映画は鈴木清順監督の『ツィゴイネルワイゼン』(1980年)が好きで、今回の作品までその影響を受けている」
「コンビニ―」は映画評論家のマーク・シリング原案を三木監督が脚本化。映画脚本家(成田)が執筆の邪魔と妻(片山友希)の可愛がる犬を山に捨てに行って、そこで道に迷い一軒のコンビニに入る。そこは奇妙な風体の店長(六角精児)と美しい店員(前田)がいるだけで「成田君はそこが異世界の入り口と分かっておらず、そこから奇妙な出来事に遭遇する。乗ってきた車が消えて帰れなくなった成田君は店に泊まることになり、さあどうなるかという展開になる」
内容で言えば、鈴木清順と同時にデイヴィッド・リンチ、コーエン兄弟監督などのノワール感覚に近いものがある。「生と死が地続きという神話の世界と、今のコンビニの中にいると何でも間に合い、生きていけるという日本独特の社会の縮図を重ねている。男の成田君と女の前田君がそれぞれその辺を理解しうまく演じてくれた。男と女では受け取り方が違う映画になった気がする」
悲劇か喜劇か。それは見た人それぞれになる。それが三木ワールドといえるかもしれない。
写真は三木聡監督=大阪市内。

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