「三山ひろし公演」
2022年5月20日~31日
歌舞伎やミュージカルと同じように、演劇の1つのジャンルに商業演劇というものがある。大きく言えばプロフェッショナルの興行会社、俳優、スタッフが手掛けるものはすべてそうなのだが、狭義では座長を中心にした、どちらかというと年齢層の高い観客をターゲットにした娯楽作品ともいえる。大阪では、今は梅田コマ劇場(閉館)や全国でみると東京には明治座、新橋演舞場があるし、名古屋には御園座、中日劇場(閉館)、名鉄ホール、福岡には博多座などで上演される。そうした劇場で、森繁久彌や森光子、そして歌手が座長をとめる杉良太郎、北島三郎らの公演を見てきたし、1時期は公演で販売されるプログラムへの寄稿を1カ月に複数も依頼された、いい時代もあった。近年では、観客の高齢化やコロナ禍もあって、そうした商業演劇が少なくなってきた。また、新聞などのマスコミも〝娯楽性〟を重視する内容を、なぜか?軽視して取材(観劇)する記者をみかけることもあまりない
そんななか、商業演劇の座長として伸びしろがあるのが三山ひろし。明るいキャラクターに、歌で鍛えた芝居心もあって、「安心」してみることができる。なかには、座長の魅力をひきたてるあまり、無理な設定のものもあるなか、今回の芝居「いごっそう纏 天までとどけ!!」は無理がない、理にかなった筋立てだった。さらに、関西を拠点にする腕のある役者たちが、自然な演技できっちりと支えている。ただし、欲を言えば主人公の火消しが多勢の武士たちと互角以上の立ち回りをみせるのは少し無理がある。大詰めは、炎が燃え盛る火事場での戦いにすると、「地の利点」を活かした火消が強いのも納得がいくのでは。ショーは1時間半ほどたっぷり。さまざまなジャンルの曲を持ち味を活かしながら披露。最後の三波春夫から受け継いだ長編歌謡浪曲「元禄桜吹雪 決斗高田の馬場」も聴きごたえあり。紅白歌合戦も含めて、「脱・けん玉!」。わかりやすい文芸ものとして、山本周五郎作品などもみてみたい。
三山ひろし特別公演|公演情報|新歌舞伎座 (shinkabukiza.co.jp)

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