松井誠特別公演

                  2022年4月23日、24日

                  新歌舞伎座

 久しぶりに松井誠公演を観劇した。新歌舞伎座では一時期、毎年1か月ペースで「座長公演」を行っていたが、近年はコロナ禍もあってなかなか観る機会がなかった。思い起こせば、彼の存在を明確に認識したのは、20年前。「大殺陣 雄呂血」を同劇場で上演することになり、なんばCITYにある〝大階段〟を利用して、PRが行われた。「雄呂血」という作品は阪東妻三郎が主演した無声映画(1925年)で、主人公が大勢をたたき斬るというのが話題になった。それを松井が再現、たった1人で、大人数を斬っていく姿はさっそうとして強烈な印象だった。その後、演劇雑誌や新聞の連載などの取材をしたこともあって、注目し続けていた。

 今回は、舞踊ショーを挟んで芝居という構成、すべて松井が脚本、演出、振付を行い、全編、ほぼ〝出ずっぱり〟というほど。「生きる博多人形」と言われる女形をはじめ、ひょっとこ、おかめの面を瞬時に付け替えてコミカルに踊る得意芸や、りりしい若衆、立ち姿などを披露。芝居「沼津の林蔵」では年老いた任侠に。結末は、大団円と予想していたのと違い、残酷ながら父娘の再会を描く人情芝居で、「舞台役者」の面目躍如。

 また、この公演に「華を添える」存在だったのが、元OSK日本歌劇団男役トップスターだった、桜花昇ぼる。芝居では次郎長の妻・お蝶に扮し、いつもとは少し違う発声(高音)で新境地を開いたよう。

 大衆演劇出身で、それをベースにしながら、大劇場にもかなう洗練され、品格をたもつ独特の存在である松井誠と彼の座長公演、もっと評価されるものだと感じている。

松井誠特別公演2022 大殺陣・沼津の林蔵~娘ちゃっきり節~/株式会社MAKOTO (makotonokokoro.net)

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