「太陽とボレロ」
2022年6月3日公開
水谷豊の監督第3作。タップダンスをテーマにした「TAP THE LAST SHOW」(2017年)、交通事故によって起こる人間模様を描いた「轢き逃げ 最高の最悪な日」(2017年)に続いて、取り上げたのがクラシックのオーケストラの世界。地方都市で頑張ってきたアマチュア交響楽団が解散するまでを描いている。交響楽というのは、多くに人によって奏でるものだけに、いろいろな交流、ぶつかり合いがあり、いわゆる「グランドホテル形式」の物語が成立する。
メインになるのは、主宰者の花村(檀れい)と1番の支援者・鶴間(石丸幹二)。くしくも?元宝塚娘役トップと元劇団四季看板俳優のコンビ。このキャスティングだけで、〝音楽にあふれる〟雰囲気が出るし、さらにクラシック指揮者の西本智実が実名で重要な役柄を演じている。
タイトルにあるラヴェル作曲の「ボレロ」をはじめ、数々のクラシック楽曲が演奏シーンやバックに流れる。印象的だったのは、チャイコフスキーの「白鳥の湖」。花村があわや!というシーンに流れ、足元のアップでは、バレエでのステップの一端が出てくるシャレた演出。欲を言えば、ここは襲い掛かる黒服の男との対比で、花村の衣裳は白にして欲しかった。
水谷監督はこのようにサービス精神にあふれていて、わかりやすいことを心がけているよう。ただし、ちょっと「わかりやすすぎる」ことも。1つは、解散に悲しむ、逆恨みをする団員がそのあまり、「犯罪」を起こすこと。これはシャレにならない。もう1つは楽団リーダーと副指揮者との確執。音楽性をめぐって?と思って観ていると、意外な関係が明らかになり原因は別のところに。これはやはり、音楽をめぐる葛藤にしてほうが納得がいったのでは。
クラシック音楽ファンはいうまでもないが、1つのことに熱中する人々に共感する人にはお勧め。
映画『太陽とボレロ』公式サイト (sun-bolero.jp)