「チャレンジャーズ」
         2024年6月7日
(ワーナー・ブラザース映画 マスコミ試写会にて)

ティルダ・スウィントン主演「ミラノ、愛に生きる」でアカデミー賞、英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞にノミネートされ、ティモシー・シャラメ主演の「君の名前で僕を呼んで」で同性愛を美しく描いてアカデミー賞の脚色賞を受賞、「ボーンズ アンド 
オール」で人喰いの若者たちの恋という題材を描いて、賛否両論を巻き起こしたルカ・グァダニーノ監督。非凡だが、いつも特に奇をてらったようなところは無く、しっかりと登場人物の心理を掘り下げてきた監督の最新作は、3人の男女の恋を描いた人間ドラマだ。
主人公のタシ・ダンカン(ゼンデイヤ)は、元テニスプレイヤー。勝つことへの情熱だけは誰にも負けない彼女だったが、脚の怪我でテニス界を引退。現在はプロ・テニスプレイヤーのアートの妻になっている。しかし、テニス界のスター選手となった夫を勝たせるため、タシが全力を傾けるのとは裏腹に、アートはスランプに陥っていた。そんな中、タシが昔つき合っていたテニスプレイヤーのパトリックが現われ、タシの心をかき乱すようになる。    
アートとパトリックはアマチュア時代からの友人でライバル。物語は3人の出会いから再会までの13年間を、過去と現在を行きつ戻りつしながら、濃密なタッチで描いていく。
テニスに勝つことで、スター・プレイヤーになって社会的な影響力を持つことを目指す3人。欲望むき出しのその姿は、時に大胆に、時に繊細に描かれる。
中でも主役のタシは、ピュアリティと打算が内面でせめぎ合っているような人物で、演じるゼンデイヤにとっても挑戦が必要な役だったのではないだろうか。本作では作品のプロデュースも兼ねて、自身の限界を突き抜けて行った印象だ。2人の男性を虜にするだけでなく、サディスティックに彼らを苦しめ、彼らかれも苦しめられる演技には眼が釘付けになる。「デューン 砂の惑星」シリーズ、「スパイダーマン」3部作などに出演しているゼンデイヤだが、今後、どんな人間味豊かな役を演じることになるのだろうと期待が膨らむ。
アート役のマイクは、スティーヴン・スピルバーグ監督版「ウエスト・サイド・ストーリー」のリフに扮したマイク・フェイスト。パトリックに扮するのは、ドラマシリーズ「ザ・クラウン」、「帰らない日曜日」で印象的な演技を見せたジョシュ・オコナー。心臓の鼓動を連想させるユニークな音楽も、台詞以上に雄弁で魅力的だった。

(2024年/アメリカ/2時間11分)

配給 ワーナーブラザース映画

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