「歌舞伎鑑賞教室」
  2024年5月11日~19日

 歌舞伎というと、なんか敷居・ハードルが高く、改まった気持ちで観ないといけない…と思っている人も少なくない。そんな先入観をなくそうと、行われている松竹の「歌舞伎鑑賞教室」。狂言師や落語家らを「解説役」に起用して、いつもの歌舞伎興行とは違う視覚で歌舞伎の魅力を伝えている。
今回は、さらに〝跳んで〟、元OSK日本歌劇団の男役トップスター、桜花昇ぼるが歌舞伎役者の片岡千壽、片岡愛治郎と解説を担当。女形(千壽)と男役(桜花)という〝夢の共演〟が実現した。第1部「歌舞伎への誘い」が開幕すると、歌舞伎で使われる桜満開の舞台背景に、ミラーボールが輝き、桜色のスパンコール姿の桜花が登場。前列にいた若い外国人カップルが、「あれ?KABUKIと思っていたのに、間違えたのかな?」と一瞬とまどっていた。まず、桜花がOSKについての説明を行った。そのなかで「大正から昭和にかけて日本全国で数多くの少女歌劇団がありました」というくだりは、拙著「少女歌劇の光芒~ひとときの夢の跡」(青弓社)からの引用?とうれしい気持ちに。花道からあでやかな姿の千壽が登場してのトーク。それぞれが「違う性」を演じるための仕草や歩き方などを披露して、改めてなるほど。公演3日目(13日に観劇)ということもあってか、まだ段取りどおりを感じたが、公演を重ねるうちにリラックスしアドリブも期待したい。いつも以上に客席で多く見かけた若い観客らが興味を示したのは、ツケや太鼓などを使った効果音。言葉を超えた説得力があった。インバウドで外国人も多くいて、効果音に関しては解説役が「RAIN」「WIND」「WATER」といった英語単語を発したほうがさらに親切だろう。
第2部「京人形」は左甚五郎(片岡松十郎)が彫り上げた人形(上村吉太朗)が動き、踊り出すという、わかりやすい演目。人形ぶりからだんだんと人間らしくなっていく様子は、歌舞伎舞踊の細やかな表現がよくわかり、いい選択。帰り道、「あれは、ピノキオの女版やったなあ」と妻に話す男性の声に、これもなるほど。こうした、新鮮な感覚で楽しめる「斬新」な公演だ。
写真左から片岡千壽、片岡愛治郎、桜花昇ぼる
(C)松竹

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