「ウィッシュ」
     2023年12月15日、全国公開

 ディズニーから「ウィッシュ」の試写会に招待されて、「ディズニー100周年記念作品」であるこのアニメーション映画(2D吹替版)を観た。「白雪姫」を皮切りに、「ディズニー・アニメーション」と呼ばれるこのジャンルは、この映画を含めて62作品が製作・公開されてきたが、チェックしてみると、そのうちの8割ほどは観てきたことになる。映画関連の取材をする前の1970年代も、幼い頃は家族で、物心がついてからは友人や1人でも劇場へ足を運んだ記憶がある。もっとさかのぼると、いまでは知らない人が多いが、「ディズニーランド」(1958年8月29日~1972年4月30日)というテレビ番組が放送されていた。毎回、ウォト・ディズニー本人がホスト役で登場するので、当時としては〝最も見慣れた外国人のおじさん〟でもあった。ちなみに、金曜午後8時から1時間番組として放送されたが、1968年までは「日本プロレス中継」と隔週で放送。真逆?とも思える編成だったが、我が家は毎週、どちらの番組にも熱中していたのも懐かしい。
  62作を大きく分けると、「ファンタジア」「ライオンキング」「ピノキオ」「トイ・ストーリー」などのように動物や人形を擬人化したもの。そして、もう1つは「ディズニー・プリンセス」が「ディズニー・プリンス」と出会い恋が芽生える…。古くは「白雪姫」「シンデレラ」などから「リトル・マーメイド」「美女と野獣」や近作「マイ・エレメント」と数多くあり、いろいろなパターンのラブ・ストーリーで幅広い世代を惹きつけてきた。
 そういった視点からすると、「ウィッシュ」は斬新で、新たなチャンジともいえる。というのは、今回の〝17歳のプリンセス〟アーシャに対する〝プリンス〟は登場せず。ラブ・ストーリーは描かれていないからだ。それに代わる?存在は「どんな願いも叶える」という王様・マグニフィ王。善い人とも悪い人とも見える〝ちょいワル〟風のルックスは魅力的。さらに、吹替え版では福山雅治が甘い声で担当している。 それに加えて、物語のコンセプトもユニーク。ディズニ―作品に限らず、紆余曲折を経て「願いを叶える」というのがほとんどだが、この映画は「夢を叶えた」?人々から話が始まるのだ。自分たちが信じていた「願い」は本当に究極の「願い」なのか、問いかけてくる。
 一方、これまでのディズニー・アニメへのオマージュがいろいろなところにあるのが楽しい。例えば、人間に寄り添い人間の言葉を話す動物(子やぎのバレンティノ)、七人の小人(「シンデレラ」)を思い起こされるアーシャの仲間たち。いたずらな願い星・スターは「ピーターパン」の妖精テンカーベルのようにも思える。このほか、「白雪姫」に登場する有名な「鏡よ鏡~」というフレーズ、〝大人になったピーターパン〟。きわめつけはシンデレラ城の背景に打ちあがる花火と虹。まるで、ディズニ・リゾート内でで〝ミッキー・マウスのシルエット〟探すような楽しみもある。また、CGアニメながら、かつての手描きのタッチなのもいい。古いディズニー・ファンとしては、もう1度「セル・アニメ作品」という、いまでは大きなチャレンジも「願って」いる。
 
【ストーリー】 願いが叶う魔法の王国に暮らす少女アーシャの願いは、100 才になる祖父の願いが叶うこと。だが、すべての“願い”は魔法を操る王様に支配されているという衝撃の真実を彼女は知ってしまう。みんなの願いを取り戻したいという、ひたむきな思いに応えたのは、“願い星”のスター。空から舞い降りたスターと、相棒 である子ヤギのバレンティノと共に、アーシャは立ち上がる。「願いが、私を強くする」願い星に選ばれた少女アーシャが、王国に巻き起こす奇跡とは…
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン■監督:クリス・バック 、ファウン・ヴィーラスンソーン ■脚本:ジェニファー・リー ■音楽:ジュリア・マイケルズ ■製作:ピーター・デル・ヴェッコ 、フアン・パブロ・レイジェス■声の出演:生田絵梨花(アーシャ役)、福山雅治(マグニフィコ役)、山寺宏一(バレンティノ役)
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