映画「トゥクールトゥキル~殺せない殺し屋」
2023年7月8日から、TOHO シネマズ シャンテ、 TOHO シネマズ 梅田など全国公開

三谷幸喜が脚本・監督を務めた映画「ザ・マジックアワー」(2008年)を中国でリメイクしたウェルマイドなコメディ作品。興行収入は 26.27 億元(約 533.8 億円)を記録し、2022年の中国映画興行収入ランキング第 3 位にランクイン。これまでに中国でリメイクされた日本映画で最もヒットした「鍵泥棒のメソッド」の興行収入7.62 億元(約 140 億円)を大幅に更新したという。残念ながら、そうした情報は日本にはあまり伝わらず、「ザ・マジックアワー」とも〝かけ離れた〟タイトルもあって、ほとんど「白紙」で観た。三谷コメディが下地になっている(ラストは違うのも楽しみ)こともあって、まさに理屈抜きに楽しめた。
数多くの作品を発表している三谷だが、私は「劇団東京サンシャイン・ボーイズ」時代のものが好きだ。なかでも私が好きなのは「ショウ・マスト・ゴー・オン」「ラヂオの時代」「アパッチ砦の攻防」といった劇団時代の作品。
いまでは史実を基にした大河ドラマも手がけているが、もともとは「おかしな2人」などのニール・サイモンの〝シチュエーション・コメディ〟が彼の真骨頂。それぞれのストーリーは割愛するが、大前提に「とんでもない設定」(シチュエーション)があって、渦中の人物たちがそれを何とか取り繕うとすることで、騒ぎがさらに大きくなり、笑いがいっそう増幅するというパターン。その取り繕い方には無理があるのだが、それを屁理屈と俳優の力業で「納得」させるのがだいご味だ。
それがこの映画にもぴったり当てはまる。売れない俳優が「伝説の殺し屋」に仕立て上げられるという「設定」。その俳優だけが、現実の世界を映画の世界と信じ切って、熱演を繰り広げるというストーリー。俳優、スタッフとも中国にある劇団「開心麻花」のメンバーだそうで、コンビネーションの良さがうかがいしれる。「殺し屋」を演じる?ウェイ・シャン、マカロニウエスタンのガンマンや「雨に唄えば」のジーン・ケリーばりの歌とダンスを披露するなど、なかなかの実力派。
「マジック・アワー」とは日の出前や日の入り後の短い時間で 魔法のように美しい空をみることができる時間帯のこと。けっしてイケメンではない主人公が、「うその映画撮影」で輝く様子は、おかしく哀しい。
【あらすじ】 万年エキストラばかりの売れない役者・ウェイは何度失敗しても諦めることなく、俳優の夢を追い続けていた。
ある日、彼は大スターの女優・ミランから映画の主役として、伝説の殺し屋・カール役に抜擢される。ミランとその弟で映画監督のミラーが画策した“芝居計画”はやがてコントロールを失い、それぞれの思惑が交錯する中、ウェイたちは次々と予期せぬ展開に巻き込まれていく――。
監督:シン・ウェンション
出演:マー・リー、ウェイ・シャン、チェン・ミンハオ、アレン・アイ、ジョウ・ダーヨン、ホァン・ツァイルン
2022/中国/中国語/ビスタサイズ/122分/原題:這個殺手不太冷静/英題:TOO COOL TO KILL/映倫:G
配給: JOYUP /ムーランプロモーション 配給協力:ギグリーボックス
公式サイト:https://toocool-movie.com/     ︎New Classics Media

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