ドキュメンタリー映画「うつろいの時をまとう」
22日から第七芸術劇場で公開

「躍る旅人—能楽師・津村禮次郎の肖像」(2015年)の三宅流監督(48)の新作映画「うつろいの時をまとう」(グループ現代配給)が22日から大阪の第七芸術劇場で公開される。ファッションデザイナー2人が作ったブランド「matohu」の作品をモチーフにしたドキュメンタリーで「時の移ろいを惜しむ心の集積を追いかけた」という三宅監督に話を聞いた。
ファッションデザイナーは文化服装学院の同窓生という堀畑裕之と関口真希子の2人。「『躍る旅人—』の撮影時に能楽師の津村さんが着ていた衣装がmatohuブランドだったことを後で聞いて驚いた。伝統芸能の衣装として違和感がなく、伝統芸の中に溶け込んでいた。これはただ者ではないと思い、2人に会い、いろいろ話を聞きながら彼らが作った『日本の眼』シリーズのコレクションを知り、興味を持ったのが映画を作るきっかけになった」
「日本の眼」は17章からなるコレクションで、matohuが創った「長着」であつらえられた。「長着は日本の着物を今の時代のワンピースになぞらえたような服装で、堀畑・関口が構想した生地を使ってデザインされた。日本の伝統を帯びた『かさね』『無地の美』『ふきよせ』『ほのか』『かざり』『なごり』などで表現された。映画の撮影は『なごり』の部からスタートした」
「なごり」は「惜しむ心」からきており、字では「名残り」と書くが、語源は「波残り」で、波打ち際に打ち寄せられた貝殻や流木などを差し「それは終わりゆくものに特別に深い思いを寄せること」。「能楽師が伝統の芸を今の時代で演じる風情と似ている。それは一瞬のものかもしれないが、風情があり、堀畑さんと関口さんは常ならぬものに心を寄り添わせる。『うつろい』とは今自分が生きているから知ることができる。それが映画を見る人にとっての日常の豊さへの気付きにつながれば…」
堀畑さんと関口さんは共有しながら作業を淡々と行うが言葉が激しくぶつかる時もある。塗師の赤木明登さん、能楽師の津村さん、俳人の大高翔さんらがmatohuの2人に共有のメッセージを寄せている。堀畑さんは大学時代にドイツ哲学を、関口さんは法律を専攻している。三宅監督は1974年生まれ。多摩美大卒後、身体性を追求した実験映画などを制作。20歳の時、アンドレイ・タルコフスキー監督の作品を見て影響を受けたという。

写真は「物作りに携わる人々に大事な視点与えてくれる」と話す三宅流監督=大阪・十三の第七芸術劇場

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