映画「シャイロックの子供たち」
2023年2月17日から大阪ステーションシティシネマで公開

池井戸潤の同名原作を映画化した「シャイロックの子供たち」(松竹配給)が17日から大阪ステーションシティシネマほかで公開される。阿部サダヲら個性派スターによる銀行推理活劇で大銀行の小さな支店で起きた現金紛失事件を巡って虚々実々の駆け引きが展開される。「空飛ぶタイヤ」(2018年)に続いて池井戸原作に挑んだ本木克英監督の演出は快調である。
東京第一銀行の小さな支店が舞台で、本店に比べればどこかのんびりしているが、行員はくせ者がそろっている。出世コースから外れた支店長の九条(柳葉敏郎)と、パワハラ上司の副支店長の古川(杉本哲太)がいて、人が良さそうな営業課課長代理の西木(阿部)と部下の北川(上戸彩)が席を並べている。ほかにお客様2課の課長代理・滝野(佐藤隆太)と部下の田端(玉森裕太)といった顔ぶれの支店で、初めは100万円の金が行内で紛失する事件が起きるところから物語は始まる。
家庭環境の事情から女性の北川がすぐに疑われ、上司の西木が彼女を庇う。事情通で動きのいい西木がいろいろ推理するが、本部から検査部次長の黒田(佐々木蔵之介)がやって来る。取引先の石本(橋爪功)と沢崎(柄本明)という人物が怪しげに登場し、北川への疑いこそ晴れるが事は意外な方向に発展する。タイトルは「ヴェニスの商人」に登場する強欲な金貸しのこと。昨年ドラマ版が先に放送されたが、映画版は原作と違ったオリジナルスト—リーを加え目線を変えている。
阿部演じる西木が途中から消えたりするが、これが事件の鍵を握っており、真相を暴いていく構成。「死刑にいたる病」の怖い阿部とは逆の陽気なキャラクターながら、「もしかして…」と思わせるところがあり、カメレオン役者の面目躍如。それぞれのポジションで何を考えているか分からないのはほかの俳優も同じで特に橋爪、柄本の動きから目が離せない。当初「映画化は無理」とした原作者は脚本協力として脚色に参加している。「金は返せばいいというものじゃない」というセリフが利いている。ほかに木南晴夏、渡辺いっけい、忍成修吾らが共演。

写真は(左から)玉森裕太、阿部サダヲ、上戸彩(C)2023映画「シャイロックの子供たち」製作委員会

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