「湯道」
2023年2月23日から公開

剣道、柔道、華道、茶道、書道などを習おうとする人は、技術を高めていくのはもちろんのこと、その過程によって気持ちの持ちようにも変化が生まれる。いわば、「その道を究める」ということで、日本独特の精神性を象徴している。それらと同じように、入浴にも湯道があるというのが、この映画。お風呂といえば、「♪ババンバ バン バン バン、いい湯だな~」という根っから明るいイメージが定着しているが、企画・脚本を担当した小山薫堂、監督の・鈴木雅之は、架空の銭湯「まるきん温泉」を舞台に、「湯道」を探求する人たちをマジメに、ときには皮肉を込めて描いている。
銭湯を営む家庭に生まれた兄(生田斗真)、弟(濱田岳)、そこで働く女性(橋本環奈)を中心に、そこに通う人々の人生がほのぼのと描かれている。いろいろなカップルが登場するが、年代的に言って、笹野高史、吉行和子が扮した老夫妻が印象的。いつも一緒に銭湯に来て、帰りに夫が番台で牛乳を二人分買う毎日。そうした日常が…、というエピソードは心にしみる。また、天童よしみ、クリス・ハートのよる夫婦が壁越しに「上を向いて歩こう」を歌うシーンもいい。
このように個性あふれる出演者。そのなかで、吉田鋼太郎が演じるのは、「源泉掛け流し」にこだわり、水を沸かした湯を使う銭湯を見下している温泉評論家。彼が演じるだけに、「曰くありげ」だと思っていたが、よくも悪くも最後までそのまま。考えようによっては、グルメなどにもよくある「過度なこだわり」を皮肉ってのステレオタイプを描いたのかもしれない。
湯のダジャレで「ユー・アー・マイ・サンシャイン」の合唱など遊び心は満載。さらに、銭湯のすぐ近くにあるラーメン店にはテンガロンハットの男性がいるのは、小山がこのインスパイアされた「タンポポ」(監督・伊丹十三、1985年)へのオマージュ。さらに、湯殿に潜っていたスキンヘッドの男性(角野卓造)が顔を表すシーンは、「地獄の黙示録」(1979年)?などと勝手に〝深読み〟する楽しみも。
映画『湯道』公式サイト|2023年2月23日(木・祝)公開! (yudo-movie.jp)

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