「エンドロールのつづき」

2023年1月20日公開

「これは現代版 ニュー・シネマ・パラダイスだ」というのがキャッチフレーズ。主人公の少年が初めて観た映画に魅了される様子、映写室にもぐり込んで小さな穴から、スクリーンに映し出される映画や観衆をじっと見つめる姿は、「ニュー・シネマ・パラダイス」(年)を観た時の感動を思い出した。もちろん、「映画」がキーワードなのだが、そのなかでもPCやスマホでの「動画配信」や「デジタル」ではなく、いまでは貴重になりつつある「映画館」、「フィルム」が重要な意味を持っているから、昔からの映画ファンは懐かしもあり、うれしい。
インドのパン・ナリン監督の自伝的ストーリーで、映画に魅せられた少年が、仲間たちと映画館からフィルムを盗みだして、廃屋になったミシンなどを改造して映写機を作ってします。ぼんやりとした映像がだんだん輪郭がはっきりするシーンは、観ているこちらまでドキドキし、感動するのだ。しかし、映画館も「進化」し、DVD?をプロジェクターで映し出すことに…。こうして、親しくなった映画技師は失職し、フィルムも工場に運ばれて溶かされ、インドの女性たちが付ける腕輪へと生まれ変わる。それを何とか阻止しようとトラックを車に便乗して追走する少年。田舎町からだんだんと風景が変わり都会へと到着。それまでは、ずっと昔の物語と「勘違い」していたのだが、これがインドにおける都会と地方との格差だとわかり、恐ろしも感じた。そして、「文化遺産」でもある映画フィルム。それとは無関係に生活のために黙々と作業する労働者たち。このコントラスは、インドだけでなく、日本でも映画の「置かれている位置」を暗示するようにも思えた。
名作「ニュー・シネマ・パラダイス」の残像がいまも脳裏にある映画好きはいうまでもないが、インドにおける現実。さらにフィルムやデジタルなどで「記録」、ときには消えてしまう、ある意味での映画のはかなさもあって、心動かされるだろう。
2021年インド・フランス、
作品コピーライト:ALL RIGHTS RESERVED ©2022. CHHELLO SHOW LLP

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