高校生の頃、テレビで映画「グリース」を見て以来、大の「グリース」好きである。そのとき初めてオリビア・ニュートン・ジョンを目の当たりにして、すぐさまファンになった。その彼女が今年2022年、お亡くなりになられた。オリビアは私にとっての歌姫4天王の一人。(ちなみに他の三人は、ジュディ・ガーランド、ジュリー・アンドリュース、松田聖子)当然、DVDで「グリース」を追悼上映した。喪に服さないわけにいかない。
いわゆる感動の名作ではない。しかし、映画「グリース」に宿るエネルギーには、いつも元気をもらえる。愛すべき、心の名作なのだ。プライベート追悼上映の間に、画面のオリビアを見ながら、1冊の本を手元に置いて眺めた。それが、映画「グリース」のメイキング本だ。著者はランダル・クレイザー。映画「グリース」の監督である。ハードカバー、大型サイズの豪華本で、ずっしりとした重量感がある。2019年にアメリカで出版された。各場面の絵コンテ、シナリオへの書き込み、撮影風景、劇場でのプレミア試写の様子など、「グリース」ファンにはもう、たまらない一冊だ。その本を買った時のことを思い出した。
コロナ直前、2019年12月30日、単身で初のハリウッドを訪問し、パラマウント撮影所のツアーに参加したときのこと。数十人の参加者のうち、日本人は私ひとり。8人乗りのカートに、5人のアメリカ人の陽気なおばさまに交じって、撮影所の案内を受けた。セットのところどころでカートが止まる。案内の女性がタブレットを見せる。“ここでこの映画のこの場面が撮影されました。”と説明してくれる。「十戒」「フォレスト・ガンプ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」など。そのひとつ一つが感動ものでしかない。
そのなかに、「グリース」に登場するカフェの場面があった。“ここがオリビアの座っていた席か!”と、胸が熱くなり、座席を触りまくってしまった。
で、案内が終わり、売店に入る。商売的に抜群の流れ。そこで見つけたのが、
先の映画「グリース」メイキング本である。わが目を疑うほど、衝撃の喜びだった。“こんな本があるのか!”“この本の日本語訳本は絶対に出ない!”と思い、即座に買った。45ドルだった。
店を出ると、5人のおばさまから、“何を買ったのか?見せて見せて!”となった。見せると、“オー、グッドチョイス!”“ユー・アー・マイフレンド!”と、えらく喜ばれた。彼女たちにとっても、青春の思い出の一作なのだろう。
オリビアの訃報があった今年、この本は私にとって、彼女が残してくれた形見となった。多くの想い出がつまった、生涯、手元に置いて眺め続けたい一冊となった。そしてこれからも、映画「グリース」を見続けるだろう。ありがとう、オリビア。