「七人樂隊」
2022年10月14日からシネマート心斎橋、塚口サンサン劇場、京都シネマで公開

「エグザイル/絆」などのアクション映画で知られる香港のジョニー・トー監督(67)が地元の仲間7人に呼びかけて製作した「七人樂隊」(武蔵野エンタテイメント配給)が大阪のシネマート心斎橋ほかで上映されている。「よき時代を振り返り35㍉のフィルムで撮った野心作」という趣旨の作品。香港映画ファンには郷愁を誘うところがある。
まず「七福星」などジャッキー・チェンとの共演も多いサモ・ハン(70。昔はキンポーが付いていた)が監督した「稽古」。長くアクション監督も務めたサモ・ハンは子ども時代にカンフーの修行をしたことを回想し、「光陰矢の如し」と述懐する。名作「女人、四十」の女性監督のアン・ホイ(75)は学生時代を思い出し、30年後くらいに開いた校長先生を招いた同窓会を再現する。亡くなった優しい女性先生のエピソードが涙を誘う。
俳優のパトリック・ラム(53)が監督した「別れの夜」は香港を去る恋人と最後の夜を過ごす若い男女の切ない時間を描く。「秋桜」の歌が中国語で流れるのが切ない。チェン主演の「ドランクモンキー酔拳」のユエン・ウーピン監督(77)は、カンフーが得意な老人と香港に一時帰省した孫の女の子との短い時間を描く「回帰」。カンフーを熱心に教える老人は監督であり、昔のカンフー映画のヒーローたちに重なる。
アクション派のジョニー・トー監督は近年の同国経済状況を踏まえ若者たちの金銭感覚を描いた「ぼろ儲け」。「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」などの名作を思い出しながら時間の流れを感じさせられる。「ツイン・ドラゴン」のリンゴ・ラム監督は2018年に死去(享年63)したが、最期に撮ったのが「道に迷う」。普通の香港家庭の老人が家族と街に出て道に迷う話で切ないが、改めて都会・香港の街が映し出されて、今の香港と様子が違うような気がするのは仕方がないかもしれない。
トリの作品は「香港のスピルバーグ」といわれるツイ・ハーク監督(72)の「深い会話」。監督作も多いがチン・シウトン監督の「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」シリーズ、ジョン・ウー監督の「男たちの挽歌」などのプロデューサー業で評価が高い。新作は精神病院が舞台で、医師と患者の会話を描いている。どちらが医師でどちらが患者か分からなくなる事態で時代を皮肉っており、映画監督の名前がいろいろ出てくるのはプロデューサーとしての一家言だろう。
短編7作品を1本にまとめたオムニバス映画(1時間51分)。
写真は「校長先生」の一場面 (C)2021 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved

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