ドキュメンタリー映画「裸のムラ」
2022年10月14日から京都シネマ、同15日から大阪第七芸術劇場で公開
ドキュメンタリー作家の五百旗頭幸男(いおきべ・ゆきお)監督(44)が富山県議会の不正を丸裸にした「はりぼて」(2020年)に続いて、今度は石川県の長期保守政権と地元で暮らす人々の生活にスポットを当てた「裸のムラ」(東風配給)を発表。「地方から見える国の形、ニッポンの縮図が浮かび上がる」という五百旗頭監督に話を聞いた。
「はりぼて」は地元のチューリップテレビが富山市議会議員の政務活動費を巡る不正を暴き、市議14人が連続辞任した経緯を追った作品。同局担当の五百旗頭が砂沢智史とともに監督した。「映画公開などで紆余曲折があってチューリップテレビを辞めることになったが、映画は無事公開されてほっとした。そして仕事も隣県の石川テレビのドキュメンタリー部に拾ってもらって、今回の仕事につながった」
石川県も富山県と並ぶ保守王国として知られる。2020年春。現職最長となる7期27年目の谷本正憲知事がいる石川県庁の玄関から映画は始まる。「谷本知事の前は8期30年の知事がいた。コロナ禍の始まりで、谷本知事が『無症状の人は石川県に来てください』という失言してから、『90人の大勢と会食』などの不祥事が続き永すぎた権力集中が招いたほころびが見えた。国の長期政権とよく似た形で、自民党から馳浩が新知事候補として登場する」
地元の大御所、森義朗元首相など保守の大物が乗り込んでの県知事選が始まる中、五百旗頭監督は地元の生活者であるイスラムのムスリム一家と、バンライファー(車で生活する)として暮らす2組の家族にカメラを向ける。「それぞれの家族で夫婦、親子が平和に暮らしているが、生活の理想と現実に矛盾がある。ムスリムの奥さんから見た日本の現実。バンライフを理想とする夫と、同行する妻と娘の間の空気感。日本の社会にある家父長制(パターナリズム)が頭をもたげる」
7期谷本体制が終わり新しく馳体制が発足する。馳知事の売り文句は「石川の新時代」。会見の場で五百旗頭記者が「旧来の新時代とは?」と問う。馳知事は「核心を衝いたいい質問ですね」と苦笑いをする。映画は五百旗頭監督が担当したテレビのドキュメンタリー「裸のムラ」と「日本国男村」を合わせて生まれた。
五百旗頭監督は兵庫県生まれ。同志社大学文学部社会学科卒業。現在はバスケットの八村塁選手が通った富山市の奥田中学校近くに住んでおり「小学校の息子がバスケットで頑張っている」と笑顔を見せる。
写真は「地方はネタの宝庫です」と話す五百旗頭幸男監督=大阪の第七芸術劇場