「夜明けまでバス亭で」
2022年10月22日から大阪の第七芸術劇場で公開

昨年の在宅医療をテーマにした「痛くない死に方」に続く高橋伴明監督(73)の新作映画「夜明けまでバス亭で」(渋谷プロダクション配給)が10月22日から大阪の第七芸術劇場で公開される。連合赤軍の若者を描いた「光の雨」(2001年)以来20年ぶりに女優の板谷由夏(47)と組んで「世の中への怒りを吐露した作品になった」という高橋監督に本音の映画創りについて聞いた。
1972年にピンク映画で監督デビューして若い映画ファンの人気を集めた。あれから50年が経った。初の一般映画「TATTOO〈刺青〉あり」(82年)で高い評価を受け日本映画の先頭集団入り。実生活で同作ヒロインの関根恵子(現・高橋恵子)と結婚。その後は「光の雨」まで「映画を創る原動力は世の中に対する怒りだった」という。「ここしばらく怒りを封印する作品が多くなっていたが、世の中は醜い怒りの種が増殖するばかりで、今回はもう一度怒りをそのまま吐露しようと思った」
2年前の冬、東京・幡ヶ谷のバス亭で実際に寝泊まりするひとりのホームレスの女性が襲われ殺された。「被害女性と板谷さんの女優イメージをつなげて映画化を考えた。今は非正規雇用や就労年齢によりいつ自分の仕事がなくなるか分からない。助けを求められない人々。事件の女性は社会的孤立の中で生きていたと思う。何故彼女は殺されねばならなかったか。1本筋を通した物語(脚本・梶原阿貴)が成立した」
コロナ禍の中、居酒屋で働く主人公・三知子(板谷)は職場と住まいをなくしあっという間にホームレスに転落。「自己責任とか自助公助という言葉があるが、彼女は自尊心もあって助けを求められない。バス亭のベンチでキャリーバックを抱えて寝る彼女の姿は一見ホームレスに見えず、そんな彼女を不気味な男の目が狙っている。そこから物語はさかのぼる」
ホームレスの仲間に柄本明、根岸季衣、下元史朗が扮し、高橋監督の怒りの代弁者のようにして登場する。「板谷さんはまだ若いけれど、柄本さんたちは僕と同年代で、世の中に対して怒りをため込んでいる。その辺を映画として面白く、ずばり本音で切り込んでいるので見てほしい」。ほかに柄本佑、大西礼芳、片岡礼子、ルビー・モレノ、筒井真理子、三浦貴大などが共演。「痛くない死に方」の原作者・長尾和宏(尼崎在住)と監督夫人が製作に加わっている。
写真=「今これを世の中に発信しなければと思った」と話す高橋伴明監督=大阪の第七芸術劇場

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