映画「よだかの片想い」
2022年9月16日からテアトル梅田で公開

直木賞作家の島本理生が2013年に発表した同名恋愛小説を映画化した「よだかの片想い」(ラビットハウス配給)が16日からテアトル梅田で公開される。奈良出身の安川有果監督(36)の長編2作目で、原作のファンであった女優の松井玲奈(31)が映画化を希望した念願の作品。顔に痣があるヒロインが恋愛を通して強く生きる姿を演じて安川監督と良いコンビネーションを組んでいる。
顔の左側に痣があり、人と話すとき相手に「左側に来てほしくない」と思う。子どものころからそんなコンプレックスがあるアイコ(松井)は、理系大学院生になっても控えめで恋や遊びに消極的。出版社に務める友人のまりえ(織田梨沙)の提案で自身の半生と痣についての自伝の本を出し注目を浴び、映画化の話が舞い込み彼女の生活が少しずつ変わり始める。
それでも映画化に抵抗があったアイコは最初それを断るが、担当する映画監督の飛坂(中島歩)のまっすぐな真情に打たれて心が揺れる。映画の準備中に、彼女の役を演じる女優、美和(手島実優)が出演する舞台の観劇に行って、飛坂が自分の左側に座っていることに気付き、何か温かいものを感じる。「あなたならきっと私の左側を否定しない…」
映画化OKのサインはアイコの恋の始まりで、飛坂への自分からの告白に自身驚きながら、まりえに祝福されてうれしい。しかし、やがて撮影が始まり多忙を極める飛坂とすれ違いが多くなり彼の態度が冷たくなる。美和が彼の元カノで、どうやら彼は「映画作り優先の自己中男」で、アイコの胸に「利用されただけではないか」という猜疑心がよぎる。アイコの恋はどうなるのか。やがて彼女は大きな決意をする。
アイコの松井が憧れの恋に乙女心を高ぶらせるヒロインを清々しく、そして大人の恋の苦さ、苦しさを同時に胸に秘めたくましく演じている。飛坂の中島は冒頭の本の写真撮影現場でヒロインを見つめる目が美しいが男の身勝手さもあって彼女を戸惑わせる。安川監督がアイコの「片想い」に寄り添っているからそうなるのだろう。ラストでアイコが見せるステップに、彼女の明日が透けて映っている。
テアトル梅田が9月で閉館になる。「よだかの片想い」がラストショーの1本になる。開館翌年の1991年に自分が製作に参加した大阪の金秀吉監督が撮った「あーす」がここでロードショー公開された。いい映画をたくさん、ありがとうとお礼を言いたい。
写真=松井玲奈(右)と中島歩(C)島本理生/集英社 (C)2021映画「よだかの片想い」製作委員会
映画『よだかの片想い』|「(not) HEROINE movies」オフィシャルサイト (notheroinemovies.com)

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