心が痛い青春映画の傑作
映画「ぜんぶ、ボクのせい」
8月11日からテアトル梅田ほかで公開

金沢知樹監督(47)の少年映画「サバカン SABAKAN」の評価が高い。主人公の少年の1人を演じている原田琥之佑は故原田芳雄の孫だそうで、何だかうれしくなった。金沢監督は映画デビュー作でいい仕事したが、少年が主人公の傑作はもう一本ある。松本優作監督(29)の「ぜんぶ、ボクのせい」(ビターズ・エンド配給)がそれで、見逃せない作品である。
舞台は関東圏の小さな港町で、遠くの町の養護施設にいた少年、松下優太(白鳥晴都)が、離れていた母がいると知り施設を抜け出しここにやって来る。しかし母の梨花(松本まりか)は男(若葉竜也)と同棲中で追い返され、施設の宮本(木竜麻生)が迎えに来る。優太は母への思いを捨てきれず親身な宮本を振り切って逃げ出し、海辺で故障した軽トラックで生活している中年男の坂本健二(オダギリジョー)と知り合い一緒に生活することになる。
健二はここへ来て1年くらいで廃品回収をしながら生きているが、何か訳ありそうではある。優太に自転車泥棒や「当たり屋」(わざと人にぶつかりけがをしたと因縁をつけ金をとる)をやらせたりするワルの変人で、近所で廃品引き取り業をする片岡(仲野太賀)に「付き合わんほうがいいよ」と注意されるが、当の変人は近くに住む女子高生の杉村詩織(川島鈴遙)と仲がよく、優太も仲間になり海辺で釣った魚を焼いて3人で食べたりする時間が楽しい。
一方で詩織も訳ありで、学校帰りにワルいことしていることを優太と健二は知らない。やがて詩織につきまとう不良グループがとんでもない事件を起こして、優太はその場所にいられなくなる。オダギリジョーが訳ありを抱えた男の寂寥感をある種陽気に演じ絶妙。詩織の川島も孤独な女子高生を可愛くリアルに、そして少年・優太の悲しい独白を白鳥が力を込めスクリーンに叩きつけている。心が痛い青春映画である。エンディングに大瀧詠一の「夢で逢えたら」が流れるのが救いか。ほかに片岡礼子、駿河太郎が共演。
松本監督は神戸出身でビジュアルアーツ専門学校大阪卒。23歳のときに秋葉原無差別殺傷事件で殺された母親を持つ少女らの葛藤を描いた「Noise ノイズ」を発表。今回が長編2作目の若手である。
写真=白鳥晴都(左)とオダギリジョー(C)2022「ぜんぶ、ボクのせい」製作委員会
https://bitters.co.jp/bokunosei/

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