「晴の会 第七回 あべの歌舞伎」
「伊勢参宮神乃賑(いせじんぐうかみのにぎわい)」
2022年8月4日~7日
近鉄アート館

梨園(りえん=歌舞伎界)は、いまもなお「血筋」が尊重される世界。名跡をもつ歌舞伎役者の元に生まれた男性の多くはその「血」を受け継ぐというのが、いまの時代でも当たり前になっている。そんななか、いわゆる普通の家庭に生まれ育った人でも、歌舞伎への情熱を持つ人は、名跡を持つ家系に養子縁組をするか、一座の「脇」として舞台を支え続けている。上方歌舞伎では、かつて松竹が運営していた「上方歌舞伎塾」があり、そこから巣立った役者たちが活躍をしている。第一期生の片岡松十郎、片岡千壽、片岡千次郎を軸に結成したのが「晴の会」。「晴」をあえて「そら」と読ませて、片岡秀太郎が命名をした。
2年ぶりの公演となった第7回目公演は、第2回で上演された作品を再演したもの。3人のほか、片岡當吉郎、片岡りき彌、中村翫政、片岡佑次郎、片岡當史弥、片岡千太郎、片岡當十郎の10人が出演した。上方落語に「東の旅」という演目がある。喜六と清八が伊勢参りする道中を描いた長尺もので、そのなかのエピソード「七度狐」を基にした。劇中には、「勧進帳」で有名な「読み上げ」などの一場面もあり、ふだんは演じることができない役を、みんな生き生きと描いている。場内は三方に客席に囲まれて「舞台」があり、舞台装置も衝立などを移動させることで場面転換を象徴する、「構成舞台」。アイデアはいいが、動きがぎこちなく、役者の出入りがうまく「隠せなかった」ところもあり、これは課題。
もう一点、何度か登場する老人が、ある意味のコメディリリーフ(緊張をやわらげる役割)になっている。ただ、最初は煮売屋の女将(後に狐となって復讐する)の亭主という設定は、ストーリー的には後の言動とやや矛盾し、無理がある。ここは村人でよかったのではないだろうか。
この会を見始めてから、大きな公演に出演する彼らに注目するようになったのは、私だけでないだろう。彼らにとって大きな励みになるし、歌舞伎界にも一石を投じる効果もあるだろう。
「第七回あべの歌舞伎 晴の会」のお知らせ|歌舞伎美人 (kabuki-bito.jp)

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