「AKAI」
2022年9月9日から大阪ステーションシティシネマほかで公開

タレントで俳優の赤井英和(62)が「浪速のロッキー」といわれていた時代を振り返ったドキュメンタリー映画「AKAI」(ギャガ配給)が9月9日から大阪ステーションシティシネマほかで公開される。プロボクサーとして21戦19勝(16KO)2敗という闘いの日々が息子の赤井英五郎監督(27)によってめくられる青春の記録である。
赤井は大阪市西成区の出身で、浪速高校を受験したとき「まだ受かったわけではないのに先輩の人たちから『あす朝、食堂の前に来い』と言われた。何かと思ったらボクシング部の雑用係として呼ばれたのだった」と当時を懐かしそうに打ち明ける。高校から続けて近畿大学ボクシング部を経てプロデビュー。破竹の12連続KO勝ち(日本タイ記録)を達成し「浪速のロッキー」と呼ばれるようになる男の出発点である。
映画は今の赤井が試合の中継映像を見て振り返る構成で、英五郎監督がインタビューする形で進む。英五郎は12歳でハワイに留学し中・高・大学はアメリカで、米カリフォルニア州ウィッティア大時代に映像制作を学ぶ。20歳のときからボクシングを始めて昨年9月にプロデビュー。「今はコロナ禍のとき。父の闘いを振り返り『生きていれば何とかなる』という思いを映画に託した」という。
映画のハイライトは「2敗」の試合で、初めて世界チャンピオンに挑戦したブルース・カリー戦と引退の引き金になった大和田正春との世界前哨戦。ともにラウンド7での敗北で、後者の試合の経過は「全く思いだせない」と本人は今も首をひねる。凄絶な打ち合いの末の「完敗」であるが、観客の多くが「信じられない!」と茫然とした。
生存率20㌫の脳の大手術を経て奇跡的に助かった赤井は「まだ闘うつもりだったが、主治医から引退の宣告をされた」ことでやっとすべてが終わったことを知った。まだ25歳の若さだった。背が高く二枚目でカッコよく、強くたくましい。ヒーロー「浪速のロッキー」は伝説になった。
「どついたるねん」(1989年)という自伝的映画で俳優業に転向し、今も活躍し人気者である。赤井の俳優としての資質を見いだした同年代の阪本順治監督の友情も大きいが、がむしゃらな闘争心と、人間的な優しさが彼の人生のベースにある。佳子夫人ら家族の支えと、大和田正春ら選手、トレーナーの故エディ・タウンゼントの友情と絆も見逃せない。
朝日放送テレビが映像提供し阪本順治監督が協力している。
写真=「AKAI」の赤井英和(右)とエディ・タウンゼント(C)映画「AKAI」製作委員会

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