映画「サバカン SABAKAN」
2022年8月19日からTOHOシネマズ梅田ほかで公開

長崎県の田舎町を舞台に少年たちのひと夏の冒険と友情を描いた「サバカン SABAKAN」(キノフィルムズ配給)が8月19日からTOHOシネマズ梅田ほかで公開される。ドラマ「半沢直樹2」の脚本で知られる金沢知樹(48)の初監督作品で、この夏一番の感動作である。
金沢監督は斎藤工が監督した短編「半分ノ世界」(2016年)や、江口カン監督の長編デビュー作「ガチ星」(同)の脚本を担当して力を示し、ドラマ「半沢直樹2」で名を売り、ようやく映画監督として登場。お笑い芸人から劇団K助を主宰して活動した時代もあるが、今回の映画は本人の自伝的な作品であり、自ら体験した少年時代の短いけれど美しい時間を、力を込め瑞々しく描いている。
1986年の夏。長崎県長与町の小学校に通う5年生の久田孝明(番家一路)が主人公。勝ち気な母(尾野真千子)と陽気な父(竹原ピストル)と弟の4人家族で、孝明はのほほんとした少年。クラスで仲間外れになっている竹本健次(原田琥之佑)とひそかに仲良くなり、彼の誘いでイルカがいるというブーメラン島に行くことになる。孝明の自転車に2人乗りしての小さな冒険旅行で、不良に脅されたりしながら窮地を乗り越えていく少年たちの胸のわくわく感が心地よく伝わってくる。
父がおらず母(貫地谷しほり)と5人兄弟で暮らす貧乏な家庭の健次に同情していた孝明だったが、彼の明るい行動でいつの間にか兄弟のようにわだかまりがなくなっていくプロセスが淡々と描かれ、やがて不幸な出来事に巻き込まれ2人は別れなければならなくなる。孝明が健次の家に初めて上がってサバカン(サバ煮の缶詰)の自前寿司をごちそうになる場面がある。健次の兄弟が隣の部屋からのぞいているので孝明が「みんなで食べよう」という名場面につながる。
映画はその後大人になった孝明(草彅剛)の回想で語られるが、草彅の語りが絶妙で胸染みるラストシーンを迎えることになる。孝明の両親の尾野・竹原、健次の母親・貫地谷の好演が作品を支え、冒険旅行で出会うみかん畑のおじさん・岩松了も印象的。そしてブーメラン島で出会う孝明のミューズ、由香・茅島みずきの存在が圧巻である。少年2人に「よかったな!」と伝えたい。
写真=「サバカンー」の番家一路(左)と原田琥之佑(C)2022「SABAKAN」Film Partners
映画『サバカン SABAKAN』公式サイト (sabakan-movie.com)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA