「プアン/友達とよばせて」
2022年8月5日から
シネ・リーブル梅田、イオンシネマ シアタス心斎橋などで公開

主人公が古い知り合いの頼みで、想い出の旅に出るロード・ムービー。旅の過程で様々な人間模様が展開する。ニューヨークでバーを経営するボスは、久しぶりに連絡して来た友人のウードが、白血病で若くして余命宣告されたことを知る。驚いて故郷のタイに帰り、ウードとともに彼の関係者を訪ねて旅をするが、その過程で浮き彫りになったのは、勝手気ままに生きて他人を傷つけて来たウードの半生だった—。
「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」で話題を呼んだバズ・プーンピリヤ監督が、「恋する惑星」「花様年華」のウォン・カーウァイのプロデュースで完成させた作品である。シナリオはシンプルで、特に複雑な仕掛けがあるというわけではないが、カメラワークが優雅で一つひとつのシーンに説得力がある。たとえば、ウードが女性とダンスを始めると、その背後で老カップルのダンスが始まり、余命わずかのウードの孤独と命のはかなさが強調される、といった具合。後半は台詞を重視した作りで、ボスとウードの関係性を描くことに焦点が絞られる。階級差のある2人の過去に一体何があったのか。一見、説明的なシーンが多くなるが、チラッと登場するだけの端役にまで、ちょっとしたドラマを感じさせる細やかな演出だ。「クリスマス・キャロル」のスクルージおじさんよろしく、昔の恋人に眉をひそめられ惨めな想いをするウード。しかし、世界的な政情不安の中で本作を観ると、人生の最後に、気がかりなことを振り返る時間があったら、それは幸せなことだと思った。ユーモアを交えて練られたシナリオに、ちょっと“老成した”人生観やメッセージも滲ませた、バズ・プーンピリヤ監督の力作である。128分/タイ
映画『プアン/友だちと呼ばせて』公式サイト (gaga.ne.jp)
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