映画監督・大島渚生誕90年
2022年7月23日~8月26日
大阪のシネ・ヌーヴォで上映会

映画監督の大島渚の生誕90年を記念して全24本の作品を上映するイベントが7月23日から8月26日まで大阪のシネ・ヌーヴォで行われる。社会を挑発し続けた巨匠のデビュー作「愛と希望の街」(1959年)から遺作「御法度」(99年)までで、その全貌が明らかにされる。
大島作品で一番好きなのは「愛と希望の街」である。後に松竹ヌーベルバーグの旗手と騒がれるが、その予兆をはらみながら、しかし静謐な少年の反乱の物語である。同じ年に出た今村昌平監督の「にあんちゃん」と、その弟子の浦山桐郎監督の「キューポラのある街」(62年)、そして小栗康平監督の「泥の河」(81年)と並んで私の心に残る少年映画ベスト4である。大島の書いたオリジナル脚本のタイトルは「鳩を売る少年」だった。
2、3作目の「青春残酷陽の墓場」は、鬱屈した若者たちが傷つきながらあがく姿が痛々しく、桑野みゆき、炎加世子の美しい顔が鮮烈に浮かぶ。「日本の夜と霧」「絞死刑」に見る強烈なメッセージを思い出すが、足立正生(監督)、松田政男(映画評論家)ら同人の出演シーンも懐かしい。亡くなった松田さんから生前よく「絞死刑」の話を聞かされた。「悦楽」「白昼の通り魔」「日本春歌考」から「愛のコリーダ」「愛の亡霊」と進む過激なプロセスも鮮烈だ。
「おおさかシネマフェスティバル」の前身「おおさか映画祭」で「大島渚と少年映画」というテーマで「愛と希望―」の上映とトークショーをやったことがあり大島、松田両名が出席してくれた。怖いイメージがあった大島さんがことのほか優しく、ほっと胸をなで下ろした思い出がある。東映京都で「御法度」の初日セット取材に参加し、病気療養で10年近く現場を離れていた大島監督が「よーい、はい!」の第一声を発し、セットのスタッフ、俳優、取材人から大きな拍手が起きた。俳優デビューの若い松田龍平もそこにいた。
今回の記念上映で行われるトークショーに映画評論家で監督の樋口尚文、大島監督の息子で映画監督の大島新、映画評論家の上野昂志、大島渚賞受賞者で映画監督の小田香、藤元明緒が参加する。
上映スケジュールとトークショーの詳細は電話06・6582・1416、劇場まで。
写真は生前の大島渚監督:大島渚プロダクション

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