ドキュメンタリー映画「ブルーアイランド 憂鬱の島」
チャン・ジーウン監督に聞く
2022年7月22日からシネ・リーブル梅田で公開

香港を拠点に活動するチャン・ジーウン監督(34)のドキュメンタリー映画「ブルーアイランド 憂鬱の島」(日本・香港合作。太秦配給)が7月22日からシネ・リーブル梅田で公開される。2014年に起きた大規模な市民運動を検証したドキュメンタリー映画「乱世備忘 僕らの雨傘運動」(16年)に続く2作目。「香港人のアイデンティティを、今の香港の状況から振り返った」というジーウン監督に話を聞いた。
「前作は僕が香港の大学を卒業してすぐで、若者が政府に対して抗議する雨傘運動に入って運動しながらこれを多くの人に伝えたいと小さなカメラで追って作った。一国二制度が政府の手で踏みにじられるような不安定な空気の中で育ち、社会的な大混乱が『香港人』というアイデンティティを探るきっかけになった。集団的な失意と絶望感に覆われながら、その先にあるものを見たくて今回は撮影に臨んだ」
中国の文化大革命(1966~76年)、香港の六七暴動(67年)、中国の天安門事件(89年)が起きた時にそれを体験した香港人3人が映画の中心にいる。19年の抗議運動などに参加した多くの若者たちが3人の話を聞き、そして「その流れについて考察する」という構成。「文革後中国から香港に夫婦で泳いで逃げて来たチャン・ハックジーさん(74)は今もビクトリア・ハーバーで泳ぐのをセレモニーにしている。運命に翻弄されても強く生きてきたことの証明だ」
香港がイギリスから中国の支配下に移った97年に香港で生まれたアンソン・シェムさん(24)が文革体験のハックジー老人の若い頃を再現ドラマで演じ、今の自分の環境と比べて意見を述べ「香港には自由があった」と語る。ジーウン監督も「僕の親世代は天安門事件後に香港にやって来た人が多くいる。映画に登場していただいた弁護士のラム・イウキョンさん(54)は毎年の天安門事件追悼式に参加し祈りを捧げ若者と対話を続けている。その式典も昨年からできなくなっている」と話す。
映画は「ドラマを通してドキュメンタリーで語る」という二重構造の手法がとられている。最後5分に19年の抗議運動で国家安全維持法に問われた多くの若者たちの顔が映し出される。「彼らの視線の先に希望を見たかった。まだまだ終わっていないと思う。これからも香港を撮り続ける」とジーウン監督は言葉をつないだ。
プロデューサーとして香港からピーター・ヤム、アンドリュー・チョイ、日本から小林三四郎、馬奈木厳太郎が参加。クラウドファンディングの応援も受けている。

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