◎「ばちらぬん」
                 2022年5月14日公開
                 大阪・第七芸術劇場など 

 昨年のぴあフィルムフェスティバル(PFF)でグランプリを獲得した「ばちらぬん」(東盛あいか監督)が5月14日から大阪の第七芸術劇場で公開される。タイトルは日本最西端与那国島の言葉で「忘れない」という意味。同地出身の東盛監督(24)が主演も兼ねて撮ったドキュメンタリーとファンタジーをクロスさせた青春映画である。
 同作は京都芸術大学映画学科・俳優コース在籍中の卒業制作として撮った初監督作品。「コロナ禍の4年生の時、初め予定していた劇映画ができず落ち込んで田舎に戻って閉じこもっていたとき、与那国島の人々や言葉、景色などをあらためて観察。大学に入った時からここで映画を撮りたいと思っていたので、これだと決めた。自分の故郷で作る映画だから出演しながら監督もやらなければ成立しないと思った」
「地元の中学校を卒業して高校がない島だったので石垣島の高校に入るが2年の時に中退。中学では陸上部で走っていて、運動で高校に入れたこともあり勉強に挫折。引きこもりながら映画館に行って、映画が面白く、逃げ場みたいになった。それに関わる仕事がしたいと思い、あらため大学へ行こうと決めた。芝居がしたいと俳優コースを選んだが、映画全般を勉強することができて次第に夢が広がった」
当初から7ページだけの脚本で、キャストとスタッフは学生仲間で編成。自らは監督、撮影、美術、編集を担当。「与那国島でドキュメンタリー部分(現実)を撮って、ファンタジー(夢)の部分は京都で撮った。コロナで動けないこともあって、キャストは島に呼べず口頭で説明して芝居をしてもらった。与那国島の方言が入ったセリフを覚えるのがみんな大変だった」
出演者は全員学生の自主映画体験者でそれぞれ個性的な芝居を見せた。「私は島を走る少女の役。自分自身の体験というか、分身の役どころ。島の人々や風景などと、島の言い伝えや神話などの境界線を結ぶ役どころを少女に託した。映画は必死に作ったが、PFFグランプリをいただいた上に映画館で上映できることになり感無量。個人的な作品だが、見る人に少しでも普遍的な線でつながるところがあればうれしい」
京都芸術大学卒業生の先輩、工藤梨穂監督が2018年PFFグランプリを獲りこのほど同スカラシップで撮った新作「裸足で鳴らしてみせろ」が今夏公開される。「尊敬している工藤先輩の後に私も続きたいです」と顔をほころばせる。
「ばちらぬん」は同じ与那国島で撮影された「ヨナグニ~旅立ちの島~」と併映で「国境の島に生きる」というタイトルで特集上映される。
ばちらぬん : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA