シネマ歌舞伎「桜姫東文章」(さくらひめあずまぶんしょう)上の巻」

         2022年4月13日  大阪ステーションシティシネマ

 あでやかな桜姫ときりっとした釣鐘権助。坂東玉三郎、片岡仁左衛門によるこのビジュアルを観ると、様式美にあふれた作風を想像するが…。四世鶴屋南北による、物語は、ぎらぎらとした人間の業がリアルに表現されていて、歌舞伎ならではの「因縁」もあるが、現代劇にも通じる人間ドラマ。36年前、当時の片岡孝夫と玉三郎による「孝玉コンビ」はすごい人気だったが、生で観る機会がなかったのは残念。

 玉三郎は桜姫と共に、冒頭には稚児の白菊丸として登場。「あらすじ」をある程度、把握していないとちょっと混乱するが、これが大きなカギをにぎっている。また、仁左衛門は権助と清水寺の高僧、清玄という「俗と聖」の2役を。暗闇で関係を持ってしまった権助と再会した桜姫が欲望に負け、抱きあう場面。舞台に簾が下りると帯を解いた後の着物が少し簾に挟まれている。これでいいのか?といらぬ心配をしていると、通りかかった僧侶がそれを観て、「簾の向こうでなにが起こっているか」を推察してのぞき見をするという、繊細な演出だった。

 映画館なので言うまでもなく花道はないのだが、花道から登場する瞬間に鳥屋揚幕(よやあげまく=花道のつきあたりの入り口にある幕)を開ける時の「チャリン」と音が劇場後方から聞こえてくるのも、演劇場でもなく、映画館でもない「シネマ歌舞伎」ならではの趣向だった。3時間近い「上の巻」は、身分を失いさまよう桜姫と清玄が「再会」する場面で幕。4月29日からは「下の巻」が公開。2人の行方が気になって…。観るしかない。

写真は(C)松竹

桜姫東文章 上の巻 | 作品一覧 | シネマ歌舞伎 | 松竹 (shochiku.co.jp)

 また、2人が共演した「助六曲輪初花桜」(1998年)は5月31日まで、「東海道四谷怪談」(2021年)は4月から6月まで、「菅原伝授手習鑑」(2004年)は5月から7月まで「歌舞伎オンデマンド」で観ることができるそう。(有料)。これも見逃せない

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