「帰らない日曜日」

さすがイギリス映画、名家の跡継ぎとメイドという20世紀初頭では「禁断の恋」を描いていても、ドロドロではなくて品格を保ちながら、しかも意外な結末もあって、1つの完結したドラマとして成り立っている。メイドのっジェーンを演じるオデッサ・ヤングは多くのシーンで「一糸まとわない」姿を披露しているのだが、けっして煽情的ではなく、豪邸の図書室などを散策するシーンは身分などの「外観」を背負う必要がない、「素の自分」を体現している。

彼女を取り巻く上流階級の人々を演じる俳優たちは、華やかな光を放つ「スター」ではなく、内面から人生のたたずまいがにじみ出てくる。「英国のスピーチ」でジョージ6世を演じたコリン・ファース(アカデミー主演男優賞)をはじめ、「女王陛下のお気に入り」でアン王女を演じたオリヴィア・コールマン(アカデミー賞主演女優賞)、そして、メイドと恋に落ちるジョシュ・オコナーはテレビシリーズ「ザ・クラウン」でチャールズ皇太子を演じた経験があるなど、気品あふれる人物像は経験済み。そして、久しぶりにスクリーンで見たグレンダ・ジャクソン。ケン・ラッセル監督の「恋する女たち」(1969年)での奔放な姿がいまも記憶に残っているが、歳月とさまざまな経験をへた「存在感」「説得力」がある。 

 物語はジェーンの22歳、46歳、そして小説家として思い出を綴った老年が登場。そのなかで、40代のジェーンと恋人との出会いと交流は、やや描写不足に感じたのが惜しい気がした。

■作品クレジット:

© CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE AND NUMBER 9 FILMS SUNDAY LIMITED 2021

映画『帰らない日曜日』公式サイト|2022年5月27日(金)全国公開 (shochiku.co.jp)

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