「入国審査」
2025年8月1日、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都ほか
アメリカに移住するため、ニューヨークの空港に到着したカップルが、差別的な入国審査を受ける様を描いた異色の密室劇です。監督が実際に経験したことをベースにした展開にはリアリティがあり、低予算の作品ながら各国で高い評価を得ています。
ディエゴとエレナはアメリカへの移住を希望するカップル。ところがバルセロナからニューヨークの空港に降り立ってほどなく、二人は職員に引き留められ、別室に連れて行かれる。エレナはスペイン出身だが、ディエゴの国籍がベネズエラだったことが、入国管理局からの不審を招いたようだった・・・。
狭い部屋で2人が尋問を受けるシーンは独特の編集で、観ているこちらも審査官から尋問を受けているような嫌な感じがします。ついつい身近なテーマとしてこのドラマを観てしまうのは、カメラアングルなどテクニック上の問題だけでなく、トランプ政権下のアメリカのニュースが、日々流れて来ることと関係があるのでしょう。
嬉々として権力を濫用する側の、バスケス審査官とバレット審査官役の俳優は、今年登場した中でも最も憎々しい悪役です。この映画を観る上で、アメリカの入国管理局では、もともとベネズエラ出身者は警戒されている・・・と言うことなどいくつかの知識は必要ですが、よくあるいじめの構図を凝縮したような映像なので、広く誰にでも伝わる要素にあふれています。
人種や宗教や出身地や性別など、私たちのバックグラウンドは、ともすると差別の引き金になりますが、それを食い止める方法も何かある筈。高校生でも中学生でも小学生でも、なるべく若い頃にこの映画を観て、差別する側にならないように。又、本作の監督のように、差別されたら正々堂々と抗議出来るようになってほしいと思いました。マスコミの注目度も高い作品です。
ディエゴ役にアルベルト・アンマン、エレナ役に「悲しみに、こんにちは」のブルーナ・クッシ。アレハンドロ・ロハスとフアン・セバスチャン・バスケスによる共同監督・脚本。
(2023年/スペイン/77分)
配給 松竹
© 2022 ZABRISKIE FILMS SL, BASQUE FILM SERVICES SL, SYGNATIA SL, UPON ENTRY AIE