「ツユクサ」
2022年4月29日公開
「草笛に使うのには、ツユクサがいい」。子供を失い小さな町で暮らすようになった芙美(小林聡美)。寂しみを紛らわせるための酒を断ち、会社の同僚たち(江口のりこ、平岩紙)やスナックのマスター(泉谷しげる)たちと交流して暮らす彼女のまえに現れた吾郎(松重豊)は、そう話して草笛の吹き方を教える。
1億人に1人という確率で、隕石に車がぶつかる〝奇跡〟はあったが、平凡に暮らしている芙美の日常を淡々と描いていく。前述したキャストのほかにも、なぜかラジオ体操で太極拳のような動きをする上司にベンガル、断酒会の世話役に落語家の瀧川鯉昇、サーフィン好きの僧侶に同じく桃月庵白酒、寡黙な男に渋川清彦。そして、天体大好きな少年に斎藤汰鷹と誰をとっても絶妙なキャスティングだ。
何度か出会ううちに、ひかれあう芙美と吾郎のぎこちない恋の進展が心温まる。そんな〝自然〟な描写だけに、ちょっと気になるシーンが。交通整理の仕事をする吾郎の元に、車でやってきた芙美は車を降りて彼に想いを語る。この映画のトーンからして、これはあまりも「劇的」すぎる気がした。さらに、吾郎が東京に戻るのも少し唐突?な気もした。
いずれにしても、「刺激が強い」昨今の映画界にあって、こんな水彩画のようなタッチの映画をもっと観たい。監督・平山秀幸
映画『ツユクサ』公式サイト | 絶賛公開中 (tsuyukusa-movie.jp)