「欲望という名の電車」
2026年3月12日~22日
東京芸術劇場シアターイースト
4月4日、5日
近鉄アート館
ブランチを演じる篠井英介、取材会
2026年3月から4月にかけて、舞台「欲望という電車」のヒロインで主演する篠井英介が1月20日に大阪で取材会を行い、公演への意気込みを話した。
映画「国宝」で、〈男性が女性を演じる〉演劇に注目が高まっている。そうした俳優は、歌舞伎では「女形」(おんながた)、新派などでは主に「女方」(おやま)と呼ばれているが、「僕は女性を演じることを専用にしたいと思い、女性の方に向かっているという意味で『女方』(おんながた)だと思っています」と自らの立場を表現する。幼い頃から日本舞踊を習い、歌舞伎の女形にもあこがれた彼が、その〝集大成〟と思っているのが、「欲望という名の電車」でのブランチ。女性としてのかわいさ、愛おしさ、いやらしさといった多面的な心情を抱える女性。1947年にブロードウェイで初演され、1951年には ヴィヴィアン・リー、マーロン・ブランドらの出演で映画化。日本では、文学座の杉村春子によって1953年に初演、34年にわたり約600回も演じ続けた。最近では大竹しのぶ、沢尻エリカらも演じた、女優にとってあこがれの作品で役。
「中学生の時に生まれ育った金沢で文学座の公演があり初めて観ました。その後、テレビで劇場中継版が放送されて、家人には『黙ってろ』と言って(笑い)、音声をカセットテープに収録、それを夜な夜な聴いていました」。これが運命の出会いだった。俳優になってからは、自らがブランチを演じたいと熱望。約40年前には叶いそうになったが、著作権者がブランチを男性が演じることを知って反対し、断念したこともあった。しかし、時代を経てジェンダーという意識が広まるなか、2001年に初演、2003年に再演、2017年には再々演が実現。「自分ではこれでもう演じることがないか、とも思っていたのですが。ずっとこの作品のことが頭にありました」。ついに、19年ぶりの上演が決まったのだった
それほどにこの作品に魅せられるのは。「ブランチにとてもシンパシーを感じている」から、「僕自身も5歳から日本舞踊を習っている〈変わった男の子〉だったので、周りからいろいろなことを言われて、傷ついたりして…。ブランチもそうで、芯はピュアで美しいものが好きな乙女なのに、たまたま状況がそれを許さなかったというように演じたいと思っています」。
2001年、2003年のバージョンではミッチを演じた田中哲司が、今回は映画ではマーロン・ブランド、文学座では北村和夫が扮した野性味あふれるスタンリーに扮する。「彼はすごくリアルな演技をするので、虚構や夢の中で生きているようなブランチがいっそう浮き立つような気がします」。また、妹ステラを演じるのは文学座の松岡依都美。「これまで共演したステラ役の女優さんにも増して、たおやかな〈女性的〉な雰囲気があって、そんな人と男性である僕が姉として出会った時に、どんな化学反応が起こるのか、楽しみにしています」。そして、翻訳・演出はG2が今回初めて担当。「歌舞伎からミュージカルとどちらかというとエンタメ作品の演出が多いのですが、こういった古典的な文明作品にもジャンルを広めてほしいとお願いしました。翻訳もしていただき、現代的でこれまでのこの作品とはまた違った『G2節』のセリフがあって、自分が覚えている『杉村節』が出てきて、いまはそれとの格闘に苦労しています」。
女性を演じるとはいえ、女性のカツラなど、ことさらに「女性的」にはしないというこだわりがある。「そうではないと、僕が演じる意味がない。着飾って女のように見せるのは多くの人ができます。それをしないことで、女性を演じられるのが僕の特性であるし、目指すものなのです。最初に男性であることをバラしちゃことが潔いと常に思っています。若い頃にわからなかったこの芝居の素敵さが、60歳を過ぎたいまの僕に出せたら幸せだと思っています」。篠井にとって「欲望という名の電車」は、「自分の女方を確立できたような自信を持てた作品。円熟の境地と言われる舞台にしたいと思っています」
飾ることなく雄弁おだやかな語り口のなかに、自分の信じてきた道を歩み続ける強い決意を感じられた。
〈ストーリー〉アメリカ南部、ルイジアナ州ニューオリンズ。 南部の名家出身のステラ(松岡依都美)は、ポーランドからの移民である夫スタンリー・コワルスキー(田中哲司)と結婚 し、貧しくも幸せに暮らしている。 そこへ姉のブランチ・デュボア(篠井英介)が突然訪ねてくる。 デュボア家はフランス人が先祖の富裕な家柄だったが、ブランチは続いた親族の死をあげつらい、ついには家屋敷を 手放したことを告げる。 疲弊しきった様子のブランチ。ステラは姉を想って自分たちとの同居を勧め、三人の奇妙な共同生活が始まった。 粗暴で直情的なスタンリーと、上品ぶった淑女気取りのブランチは暮らしのあらゆる点でぶつかり合う。破産したと言い ながら、現実味のない言動で周囲を振り回すブランチを、スタンリーは怪しみ、彼女の過去や周辺を探り始める。 一方のブランチは、スタンリーの同僚ミッチ(坂本慶介)との出会いに、新たな希望を見出しつつあった。 束の間の平穏。 だが、小さな貸家での暮らしは軋み始め、ブランチの誕生日に決定的な亀裂となる出来事が起きてしまう。 行き場を失ったブランチがたどり着くのは……。
〈篠井英介(ささい えいすけ)略歴〉1958年12月15日生まれ。石川県金沢市出身。1984年に男優だけのネオかぶき劇団「花組芝居」旗揚げに参加。以降、看板女方として人気を博す存在となる。 1990年に退団後は女方のみならず、中 性的な役や、悪役など、変幻自在の演技派俳優として活躍。1992年、第29回ゴールデンアロー賞演劇新人賞受賞。2014年、石川県観光大使に任命。日本舞踊の宗家藤間流師範名取・藤間勘智英の名を持つ。2023年、どちらも女方の役柄で出演した、イキウメ「人魂を届けに」、ケムリ研究室「眠くなっちゃった」の公演で紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。
〈キャスト〉篠井英介、田中哲司、松岡依都美、坂本慶介、宍戸美和公、森下創、ぎたろー、平井珠生、松雪大知、吉田能。
〈スタッフ〉作 テネシー・ウィリアムズ。翻訳・演出 G2、美術・伊藤雅子、照明・倉本泰史、音楽・吉田能(あやめ 十八番)、音響・オフィス新音、ヘアメイク・馮啓孝、演出助手・渡邉さつき、舞台監督・榎太郎、宣伝美術 Web・渋木耀太 (DINARYworks)、宣伝写真・鶴田直樹、宣伝ヘアメイク・川野晶子、宣伝衣裳・浜辺みさき、広報・DIPPS PLANET、制作・尾崎裕子、プロデューサー・吉住太日志、製作・主催・吉住モータース