「ファンファーレ! ふたつの音」
2025年9月19日公開
配給先の松竹からの試写案内で、この映画を観た。帰宅してすぐに、CD棚の奥のほうにあったラヴェルの「ボレロ」、シャルル・アズナブールの「世界の果てに」を出して、久しぶりに聴いて。クラシックとシャンソン、ジャンルが違う2つの楽曲を続けて聴くというものは、この映画のおかげ。ほかにもヴェルディの「アイーダ~凱旋行進曲」といったクラシックやシャンソン歌手のダリダ「マンディ・チューズデイ」、トランぺッターのベニ・コルソンが作曲したジャズ「クリフォードの想い出」など、流れるメロディーはバラエティーに富んでいる。なかには、劇中に登場するオーケストラ、吹奏楽団が奏でるものもあるが、そのいくつかはドラマや登場人物のバックボーンを象徴するものとして重要な役割を果たしている。全体的には明るいコメディータッチで描いているが、難病との闘い、引き裂かれた家族、炭鉱労働者の厳しい環境という社会派ドラマ、人間ドラマでもある。ウィット、ユーモアとシリアスの絶妙なバランスが魅力。製作国のフランスで260万人動員、3週連続ナンバー.1の大ヒット(実写映画において)を 記録、セザール賞主要7部門ノミネート、各国の映画祭で観客賞などを受賞している。
白血病と診断された主人公が骨髄移植のドナーを探すなかで、幼い頃に生き別れになった弟がいたことを知る。このあたりは、あまりにも簡略しすぎた気がして、もう少し「弟探し」のエピソードは欲しかったが…。突然現れた兄の存在に、ドナーになるのを断る弟だったが、そんな兄弟の絆を結んだのが、「クリフォードの想い出」という1枚のレコード。トランペットの音色に癒された2人の歩みを物語っている。
弟は地元の炭鉱楽団でトロンボーンを担当していた。楽団名は架空だが、実際に活動している楽団員たちが出演しているそう。プロ俳優によるどんなオーディションでも探せない逸材、個性派ぞろいで物語を盛り上げている。コンクールのために練習を続ける楽団に、ティボが指導したのが「ボレロ」。15分間ほど同じリズムと2つの旋律が延々と繰り返されるこの楽曲。劇中にもあるが、機械が規則的に作動していることからヒントを得て作られてという。メンバーがそれぞれの歌い方をするのから始まって次第にハーモニーが成立していく。
一方、ジミーに連れられ実母の写真を初めて見たティボ。喜びと複雑な心境の兄弟は泥酔し、酔っ払い運転するするシーンは、ちょっと〝ドラマ要素〟過剰か?そして、意外な真実が明かされる…。そこで流れるのが、「世界の果てに」。シャンソンと言えば、ピアフの研ぎ澄まされた声をイメージするが、アズナブールはまさに「語るように歌う」。心に染み入り、がぜんシャンソンを聴きたくなってきた。
これが(ネタばれになるが…)大きな役割を果たす「ボレロ」が感動的。いままで、映画「愛と哀しみのボレロ」(1971年)でのジョルジュドンのあのダンスを思い浮かんだが、また1つ目に浮かぶシーンができた。
〈ストーリー〉北フランスの田舎町。世界的指揮者のティボ(パンジャマン・ラヴェルネ)が、存在すら知らなかった弟のジミー(ビエール・ロタン)と出会う。学食で働く弟の音楽の才能を知った兄は彼を何がなんでも 応援しようと決意、2人の人生は思わぬ方向へと動きだす…。
〈キャスト〉バンジャマン・ラヴェルネ、ピエール・ロタン、サラ・スコ ほか
〈スタッフ〉監督・脚本・エマニュエル・クールコル、共同脚本・イレーヌ・ミュスカリ
フランス/2024年/103分/仏語/カラー/5.1ch/原題:En Fanfare /英題:THE MARCHING BAND/日本語字幕:星加久実/字幕監修:前島秀国 後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ 配給:松竹
写真右はバンジャマン・ラヴェルネ、左はピエール・ロタン
(C)Thibault Grabherr

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