歌舞伎「刀剣乱舞 東鑑雪魔縁」
(とうけんらんぶ あずまかがみゆきのみだれ)
2025年 7月5日~27日  新橋演舞場
8月5日~11日  博多座
8月15日~26日 南座

ゲームをしたことはないけれど、2・5次元ミュージカルや映画は何度か観ている。それが歌舞伎になるとは意外なようでもあるが、よく考えるとそれもあ! ある意味では〝本家返り〟ともいえるものだし、なかでも私は関西での歌舞伎公演の本拠地ともいえる南座での観劇をした(8月19日)。期待以上に楽しめた。個性あふれる刀剣男子の姿形も奇をてらいすぎず、和物を〝逸脱〟することなく、しかも見得(みえ)や下座音楽(効果音楽)、ツケ(2本の木を板に打ちつけて鳴らす効果音)などもきっちりと駆使していた、歌舞伎への深いリスペクトを感じた。(ただし、そういった意味で、欲を言えば幕開けの落雷は効果音ではなく、鳴り物を使ってほしかったが…)。
客席は、この劇場でよく見るシニア層をはじめ、「刀剣男子」ファンの若い年齢層、そして三世代が、それぞれの見方で楽しんでいるのが新鮮だった。尾上松也が演じる三日月宗近を中心に集まった面々、時代を遡るいう設定には「歴史を変えないこと」というのが、「タイムトラベルもの」の大前提、そういった設定は他にも数々あって親しみがあり、理解しやすかった。5人がそれぞれ「氏素性」を語る場面は「白浪五人男」(「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」を意識した趣向で、これも楽しめた。
第一幕は、人物関係、時代背景の説明・描写が多く、アクティブな印象を持つ「刀剣」とはちょっと違ってはいたが、第二部で「刀剣」がさく裂!客席通路を駆け回るなど、ダイナミックな立ち回りがふんだんに登場する。そこでも、しっかり歌舞伎独特の「とんぼ」(宙返り)など、様式にこだわるのもいい。
そして、物語が終結した後は、華やかでにぎやかな「大喜利所作事舞競花刀剣男士(まいきそうはなのつわもの)」。OSK日本歌劇団や宝塚歌劇団での「ショー」が担う役割。義太夫、長唄、箏、琵琶、尺八など数々の和楽器が奏でられるぜいたくな趣向は、どんな世代の観客も理屈抜きに楽しめたろう。
さらに、最後は「写真撮影OK」の、SNS時代ならではのサービスも。大向こうの掛け声と共に「刀剣男子」のキャラクターを呼ぶファンもいて、歌舞伎の世界観と「刀剣乱舞」の世界観が融合した珍しい光景だった。

話は飛ぶが、「越境する歌舞伎」(著者・浅野久枝)という約500ページの著書を読了した。現在、松竹が管轄する「大歌舞伎」に対して、戦前戦後には地方の劇場で上演をした「中芝居」「小芝居」と呼ばれる歌舞伎があって、なかには女役者も存在したという事実を調べた興味深い内容。そのころは、劇団の大小などとは関係なく劇団や役者の交流があったという。それとは、違う事象ではあるが、各地の歌舞伎の本丸で上演された「刀剣乱舞 東鑑雪魔縁」には共通点、さらに今後の可能性、方向性もうかがわせているようにも思えた。
〈配役〉尾上松也(三日月宗近/羅刹微塵)、中村歌昇(陸奥守吉行/源実朝)、中村鷹之資(同田貫正国/公暁)、中村苔玉(髭切)、尾上 左近(加州清光/実朝御台倩子姫)、澤村精四郎(異界の翁/三浦義村)、上村吉太朗(膝丸)、市川蔦之助(異界の媼/源仲章)、河合雪之丞(小烏丸/北條政子)、大谷桂三(大江入道)、中村 獅童(鬼丸国綱)
原案 「刀剣乱舞 ONLINE」より(DMM GAMES/NITRO PLUS)松岡 亮。脚本・尾上菊之丞。演出・尾上松也
(C)NITRO PLUS・EXNOA LLC/歌舞伎『刀剣乱舞』製作委員会

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