「蒸発」
関西は2026年3月20日(金祝)〜第七藝術劇場、京都シネマ、3月21日(土)〜元町映画館。
日本では年間、約8万人が失踪している。借金や人間関係のトラブルなど、理由は様々だ。そして彼らが一夜にして新しい生活を始めるのを助ける「夜逃げ業者」も存在している。本作は、借金が返せなくなり、家族の前から姿を消した男性や、ブラック企業に就職した後、ボスの脅迫から逃げ出した夫婦。ヤクザとのトラブルで失踪した男性などを取材。加えて、失踪した我が子を探し続ける母親の、悲痛な訴えなども描き、国外の数々の映画祭で話題となったドキュメンタリー映画である。
失踪した人々は、事情があって失踪しているので、やみくもに話を聞けば良いというものではない。映画が取材対象者に二次被害を与えることを懸念した監督達は、日本公開にあたって、匿名希望者の一部に対し、ぼかし処理と AI によるディープフェイク技術を組み合わせる手法を使っている。音声についても、単純な変声処理ではなく、AI を用いて一部の声や名前を変更する方法をとった、というのが大きな特徴で、その制作手法に監督達の思想がある。
日本の失踪者8万人のうちの多くは帰宅するものの、数千人は完全に姿を消してしまうという。本作はドイツ人映画作家アンドレアス・ハートマンと、ベルリンと東京を拠点に活動する映像作家・森あらたとの共作で、ドキュメンタリー映画祭の最高峰の一つ、コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭で連日満員を記録し、ミュンヘン国際ドキュメンタリー映画祭では最優秀作品賞を受賞した。
(ドイツ・日本/2024 年/86 分)
配給:アギィ
©2024 OSSA FILM,BR,MORI FILM
〈ストーリー〉家業の倒産で、蒸発することを選んだ藤本氏(仮名)は、夜逃げ業者の広田氏(仮名)の手を借りることにした。広田氏は新しい住所や就職先の斡旋、警察への同行など、蒸発に関する一切を手掛ける業者だ。監督は失踪当事者の藤本氏に取材し、一時は自殺も考えたという氏の過去や、残してきた家族への思い、社会復帰を目指す現在の心境や現状を聞き、更に他の失踪人達にも取材を敢行する中で、日本社会の一断面を切り取っていく。
●アンドレアス・ハートマン(監督/プロデューサー) プロフィール
ベルリンを拠点に活動する映画監督・プロデューサーであり制作会社 Ossa Film の創設者。ベルリナーレ・タレンツおよびサンダンス・インスティチュートの卒業生。ゲルト・ルーゲ助成を受け、ドイツテレビアワードのグリム賞にノミネートされる。監督・プロデュース作品は、ヴェネツィア国際映画祭、釜山国際映画祭、DOK ライプツィヒ、フィレンツェポポリ映画祭、シネマ・デュ・レエルなど、世界各地の国際映画祭で上映されている。長編第 3 作『自由人』は、第 22 回釜山国際映画祭にて釜山シネフィルアワードを受賞。
●森あらた(監督/共同プロデューサー) プロフィール
ベルリンと東京を拠点に活動する映画監督・映像編集者・アーティスト。ドキュメンタリー映画、テレビドキュメンタリー、ダンス・シアター、建築など、活動は多岐にわたる。学習院大学日本文学日本語学科、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ美術大学ファインアート科を卒業。ヴィム・ヴェンダース奨学金を受賞。またアジアン・カルチュラル・カウンシル個人フェローシップを受ける。2021 年に、中国の新シルクロード沿いの都市を舞台にした架空の映像旅行記、実験的ドキュメンタリー作品『ア・ミリオン』を第 64 回 DOK ライプツィヒで上映。建築写真家ラウリアン・ギニトイウとともに“another:”を共同設立、BIG、OMA、SO-IL、塩田千春ら建築家、アーティスト達と映像を通してコラボレーションを行う。ヴェネツィア建築ビエンナーレにも作品を出展。WOWOW と IPC の共同プロジェクト、パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM」で国際エミー賞にノーミネートされる。