「センチメンタル・バリュー」
2026年2月20日
〝家〟からどんな感情をかき立てられるかは、人によって様々だろう。懐かしさ、楽しさ、希望や安心かもしれないし、後悔、苦しみ、憎しみを連想する人も居るだろう。そんな、概念としての家を軸にしながら家族を描いたドラマが、第98回アカデミー賞で主要部門にノミネートされている。
主人公は、オスロで活躍する舞台俳優ノーラ。母を亡くした後、妹のアグネスと支えあって生きてきたノーラの前に、長年不在だった父・グスタフが現れる。
父と子の愛憎入り交じる物語を、舞台となっているノルウェーの歴史や戦争と関連付けながら、重層的に描いたシナリオが面白い。ある時はノーラの視点、ある時はグスタフの視点、という具合に、複数の視点から描かれているため編集は複雑だが、映像に工夫があって最後まで散漫にならず飽きさせない。
物語の核になる微妙な親子関係を演じたノーラ役のレナーテ・レインスヴェは、『わたしは最悪。』の主演でカンヌ国際映画祭の女優賞を受賞。父役のステラン・スカルスガルドも、世界中で多くの受賞歴を持つ俳優で、本作もアカデミー賞で主要部門にノミネートされているが、妹役のインガ・イブスドッテル・リッレオースと、アメリカ人俳優役に扮するエル・ファニングが、今回、助演で2人ともノミネートされている。競合作品も強者揃いの中、監督のヨアキム・トリアー(『わたしは最悪。』)とシナリオ共同執筆のエスキル・フォクトが、主要人物4人を有機的に組み合わせ、情念の世界を繊細に描いた人間ドラマである。
(ノルウェー/2時間13分/2025年)
配給: ギャガ NOROSHI A GAGA LABEL
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〈ストーリー〉ノーラとアグネスは、ノルウェーのオセロで暮らす姉妹。母を早くに亡くし、支えあって生きてきたのだが、ある日、父のグスタフが現れる。グスタフは著名な映画監督で、ノーラ達が育った実家で彼女を主演に映画を撮りたいと提案して来た。長い間不在だった父との間には溝があり、その時すでに、舞台俳優として知られるようになっていたノーラは打診を断るが、アグネスは協力しようとする。