「恋愛裁判」
2026年1月23日公開
(東宝の試写会にて鑑賞)
『淵に立つ』『よこがお』『本気のしるし』など、問題作、話題作を監督して国際的に高い評価を受けている深田晃司監督の新作は、アイドルの人権に関する物語だ。実際にあった裁判に想を得て企画し、三谷伸太朗と共同で脚本を手掛けている。
アイドルの恋愛禁止という規定については、別のドキュメンタリー作品『DOCUMENTARY of AKB 48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?』を観るとわかりやすい。異性と付き合っていたことが判明し、メンバーの2人が全国握手会のステージで、恋愛禁止のルールに違反したことを謝罪し、AKB48の活動を辞退する・・・というひとコマがそこに描かれている。だがそもそも、恋愛禁止とは誰のためにある契約なのだろうか?本作はマネージャー、事務所社長、ファン、という三者の立場を明確にしながら、アイドルをめぐるシステムを描きあげる。
ドラマは5人組アイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバーの仕事と私生活に光を当てていく。主人公の真衣とつき合う青年、真山がパントマイマーであるという設定なので、台詞の他に時折パントマイムが取り入れられ、演出はファンタジックだ。「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバー同士が、さりげなく助け合うシーンがあるのは、深田監督が〝女の敵は女、という描き方をしたくなかった〟からだと言う。他の監督なら、集団の中のいじめを描き込んで、もっとセンセーショナルに盛り上げたのかもしれないが、そこにブレーキをかけたのは深田監督の性格だろう。
アイドルと聞くと、別世界のことのように聞こえるが、資本主義社会では人間はみんな基本的に「商品」で、映画を観る観客の世界と本作の世界は、実は地続きなのだ。たまたまアイドルのような芸能従事者は資本主義の最前線に居るのだが、アイドルもまた当然、品物などではなく生身の人間である。本作は真面目な話だが、決して芸能界を上から目線で描いた退屈な作品ではない。始めは弱く小さな主人公が愛と勇気で強くなる、という伝統的な英雄譚の構造を持っているので、『スパイダーマン』のように気持ちよく読み解くことが出来る。
ミニシアターで作品を上映するところからキャリアをスタートさせた深田監督は、本作のラストにエリック・ロメール作品『緑の光線』へのオマージュを持ってきた。東宝系の映画館で公開されようと、ミニシアターで公開されようと、彼はデビュー当時から本質的に変わらない。それどころか、いずれ映画界を変えていくことになるだろう。多くの人の「当たり前」に光を当てることによって。
(2025年/124分/日本)
(ストーリー)
5人組アイドル「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバー山岡真衣は、ある日、中学時代の友人・真山敬と再会する。真山は中学時代にアルバイトでお金を貯め、英国に留学してパントマイムの技術を身につけ、ストリート・パフォーマンスをする魅力的な青年に成長していた。事務所との契約時に恋愛禁止の項目があったため、真衣は真山と秘かにつき合い始めるが、2人の仲はほどなく事務所に知られ、契約違反として裁判所に召喚される。
配給:東宝
©2025「恋愛裁判」製作委員会
出演 齊藤京子 倉悠貴 仲村悠菜 小川未祐 今村美月 桜ひなの
唐田えりか 津田健次郎

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