「道草キッチン」
2025年12月12日から京都シネマ、12月13日から第七藝術劇場、元町映画館で公開
多くの人が行き交っているのに、〝触れ合う〟ことが少ない都会。一方、周りにあまり人がいないのに、〝触れ合い〟が濃い田舎。どちらも、もう一方の暮らしを夢見ているかもしれない。この映画はひょんなことで、都会から田舎に引っ越してきた女性が、さまざまな人々と出会う様子を描いている。中江有里にとって、「風の歌が聴きたい」以来26年ぶりの主演映画。立(りつ)というヒロインに「いまの自分」を投影しているような、自然な演技を見せている。
都会でのひとり暮らしをしていたが、更年期障害に悩まされたことなどもあり、徳島県の吉野川近くにある田舎に移り住み、心優しい人たちに出会う。ドラマチックな展開はなく、立がそうした人たちとの交流を深めていく様子を綴っている。ベトナム女性をはじめ、出演者たちはそれぞれにキャリアがあるが、まだまだ広く知名度があるわけではなく、それがかえって本当の市井の人に思えて、物語に溶け込んでいける。一方、大塚まさじ、今陽子という広く知られた歌手・俳優も出演、これが大きなアクセントになっている。お遍路をする老人を演じた大塚は、存在そのものが「なにか」を語っている。また、旅を重ねている度胸の広い女性に扮した今も適役。 そうした人々が集い、ベトナム料理を一緒に味わう光景はほのぼのとしていて、うらやましいほど。
欲を言えば、「ウエルカム」の地元の人たちが登場するが、現実は「よそ者」に違和感を抱く人もいるのでは?立とそうした人とが交流を深めいていく様子も見たい気もした。
〈ストーリー〉都会で小さな喫茶店を営む主人公・桂木立(りつ)。家族や親戚もいない彼女は、余生を 1 人で生きていこうと決めていた。そんな折、再開発の影響でお店は立ち退きを余儀なくされ、閉店に。さらに、健康上の問題も重なり、将来への不安を抱え、茫然とする立。そこに突然、吉野川市から相続に関する通知が届いたことを機に、徳島への移住を決めた。立は初めて訪れる徳島の地で、様々な事情を抱えた地元の人々や、懸命に日本で生きるベトナム人たち、そして自然豊かな食材をもとに作られるベトナム料理を通じた至福の時間を経て、徐々に自分自身の中にある過去のわだかまりや親族との繋がりに真摯に向き合い、自分の生き方を見つめ直す、
〈キャスト〉中江有里、金井浩人、荒木知佳、村上穂乃佳、本間淳志、ファム・ティ・フォン・タオ、芝博文、今陽子、仁科貴、大塚まさじ、ほか。
〈スタッフ〉監督:白羽弥仁、脚本:白羽弥仁、知愛、企画協力・プロデュース:三谷一夫、プロデューサー:向田 優、協力プロデューサー: 小谷晃一、音楽:妹尾武、撮影: 藍河兼一、照明:鈴村真琴、録音: 松野泉、編集:目見田健 、美術:西村立志、衣裳:チバヤスヒロ、ヘアメイク:上田深里、助監督:岡本博文、制作担当:大宮実、整音・効果:松野 泉、グレーディング:小谷晃一、ベトナム料理 調理協力:ベトナム料理研究所、フードコーディネーター:佐伯茉南、アシスタントプロデューサー :片嶺穂乃佳、キャスティング:曺明実、スチール:林 俊宏、萬川奨、宣伝美術:普照大督、エンディング曲:「月の光」作曲:クロード・ドビュッシー、演奏:石井琢磨 (イープラス)、製作:ドルチェ・ビータ KYO、制作・配給: KYO、配給協力 TORA インターナショナル
2025 /日本/カラー /HD / 96 分
※この映画については、岩永久美の記事もご参照ください