「石炭の値打ち」
11月25日~12月12日 京都シネマ、11月29日~12月12日 第七藝術劇場
『ケス』『マイ・ネーム・イズ・ジョー』『麦の穂をゆらす風』『わたしは、ダニエル・ブレイク』など、社会派で知られるケン・ローチ監督の作品が公開される。炭鉱で働く労働者と経営幹部を軸に、70年代イギリスの光と陰を描いたヒューマンドラマで、労働問題や貧困、移民といったテーマで後に花開くケン・ローチ監督の、才能の輝きが感じられる1本だ。
ドラマは南ヨークシャーのミルトン炭鉱で働く主人公一家に焦点をあて、インフレで経済的に厳しい中でも、平凡で慎ましい炭鉱町の風景から始まる。ところが静かな町にある日、王室のチャールズ皇太子が視察に来ることになり、経営幹部達は右往左往。主人公は、「皇太子は大地主だ」とジョークを飛ばすが、幹部は王室関係者の出迎え準備に振り回される。
天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らずと言っても、上にも下にも人を作りまくっているのが現実の社会だ。主人公は息子に向かって、〝階級差別にNO〟を教えようとするが、ドラマには暗雲が立ちこめる。本作は二部構成で、第一部は、なかなか登場しないチャールズ皇太子の噂で盛り上がるコメディ調。第二部は現実の厳しさを描くシリアス路線で、後に知られるようになるケン・ローチの作風が色濃く出ている。ロングショットを多用したカットは、フレデリック・ワイズマン作品に、演劇性が加味されたかのような、ドキュメンタリータッチだ。非職業俳優達が起用されていて、アップも少ないものの、炭鉱労働者の妻達を演じた俳優の姿には迫力があった。映画で有名監督になった今では、健全な反権力がトレード・マークのようになったケン・ローチ監督。本作は1977年作品で映像も素朴そのものだが、そのキャリア初期からブレていない鋭さがある。テレビドラマとして制作され、日本では未ソフト化、未配信だったため、今回が劇場初公開となる。
(1977年/168分/イギリス)
配給:スモモ
©Journeyman Pictures
監督:ケン・ローチ 脚本:バリー・ハインズ 出演:ボビー・ナット、リタ・メイ 第一部77分 / 第二部91分|日本語字幕:岡俊彦