「ブルーボーイ事件」
2025年11月14日公開

 街を歩いていて、すれ違う見知らぬ人にちょっとした「違和感」抱く瞬間がある。そして、(いけないことだとはわかっていながら)、女装している男性を好奇の目で見ている。なかには、「性別適合手術」(性転換手術)をした人もいるだろうし、その固い決意を誰も偏見の眼差しで見ることは恥じるべき。とは思っているのだが、まだまだ、自然の景色のように心の揺れなく受け止められない自分がいる。そんななか最近、「性別適合手術」の先駆者して知られるカルーセル麻紀の半生が朝日新聞に連載れていたのを読み、社会の認識が変わってきている、とも思った。この映画は、そうした人々への「差別」や「偏見」がもっと渦巻いていただろう半世紀以上前に実際にあった事件をテーマに描いている。
 物語は1965年、経済成長を遂げつつあるなか、街の浄化の一環として売春婦たちを厳しく取り締まる攻防から始まる。逮捕された女性たちに混じって、ブルーボーイ(「性別適合手術を受けた戸籍上の男性」)もいて、彼らは「売春防止法」では取り締まることができない。そこで、警察は「性別適合手術を「優生保護法」違反として、手術を行った医師を逮捕。物語は法廷に証人として出廷したブルーボーイや弁護士、検事を描いている。最初は公の場に現れるのを躊躇していたサチを演じている中川未悠は、実体験でお手術を経験した人物。それだけに、立ち居振る舞い、存在そのものがテーマを体現していて存在感がある。そして、‘姉御肌’のメイに扮した中村中、さらに私が注目したのは、アー子を演じたイズミ・セクシー。ふくよかなスタイルは〝癒し系〟、マスコミに登場するドラッグクィーンの多くがそうであるように、つとめて明るく元気にふるまっている。しかし、その内面は哀しく、悲しい。この人物もまた、そういった経歴を持つ人たちの〝立ち位置〟を象徴している。
 そして、法廷で激しい応酬をする弁護士と検事。錦戸亮が演じる狩野は、最初は法律に準じて「違法ではない」という姿勢から、ブルーボーイたちの生きざまに共感し、熱くなっていく。一方、安井順平が扮した時田検事は、戦争に出兵した経験で感じた「男らしさ」の信念から、証人の柔(やわ)に思える言動が許せない! 法律家というより、当時の男の本音が爆発する場面は、「100パーセント暴論だ」と思えない、現在にも流れるマイナリティーへの考え方がある。
  映画はこうした廷劇の側面、サチと夫の愛情、ブルーボーイ仲間の友情などさまざまな要素を、声高に訴えるのではなく巧みに「ドラマ」として作り上げている。
 ストーリー〉1965年、オリンピック景気に沸く東京で、街の浄化を目指す警察は、街に立つセックスワーカーたちを厳しく取り締まっていた。ただし、ブルーボーイと呼ばれる性別適合手術(*当時の呼称は性転換手術)を受け、身体の特徴を女性的に変えた者たちの存在が警察の頭を悩ませていた。戸籍は男性のまま、女性として売春をする彼女たちは、現行の売春防止法では摘発対象にはならない。そこで彼らが目をつけたのが性別適合手術だった。警察は、生殖を不能にする手術は「優生保護法」(*現在は母体保護法に改正)に違反するとして、ブルーボーイたちに手術を行っていた医師の赤城(山中 崇)を逮捕し、裁判にかける。
同じ頃、東京の喫茶店で働くサチ(中川未悠)は、恋人の若村(前原 滉)からプロポーズを受け、幸せを噛み締めていた。そんなある日、弁護士の狩野(錦戸 亮)がサチのもとを訪れる。実はサチは、赤城のもとで性別適合手術を行った患者のひとり。赤城の弁護を引き受けた狩野は、証人としてサチに出廷してほしいと依頼する。

〈キャスト〉中川未悠、前原滉、中村中、イズミ・セクシー、真田怜臣、六川裕史、泰平、渋川清彦、井上肇、安藤聖、岩谷健司、梅沢昌代、山中崇、安井順平、錦戸亮
〈スタッフ〉監督・飯塚花笑、脚本・三浦毎生、加藤結子、飯塚花笑。音楽・池永正二。製作・アミューズクリエイティブスタジオ、KDDI、日活。制作プロダクション・オフィス・シロウズ。配給・宣伝・日活/KDDI
(C)2025 『ブルーボーイ事件』製作委員会

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