「非常戒厳前夜」
2025年9月6日 ポレポレ東中野
9月20日 シアターキノ
9月27日 第七藝術劇場
10月3日 京都シネマ
10月4日 元町映画館
近頃は特に、「フェイクニュース」という言葉が安易に使われている。正確には「嘘の情報」という意味のはずだが、発信する側がしっかりと「裏どり」「や「事実確認」をしなかったり、ひどい場合は「嘘」とわかっていながら広げることもある。一方、ニュースとして取り上げる側も、しっかりと「それは嘘だ」と証明しない(残念ながら、できない場合もあるが…)。それどころか、自分に不利なことであれば、「フェイクニュースだ!」と声高に言う権力者もいるのが現実。
このドキュメンタリー映画を観て、そういったことを考えさせられた。韓国で2024年12月3日、ユン・ソンニョル大統領(当時)が突然に「非常戒厳」を宣布した。日本でも韓国内における与野党の対決などニュースで報じられてはいたけれど、「非常戒厳」というものものしく重大な事態に陥るとは驚きだった。しかし、それに至るにはさまざまな動きがあって、この映画は、その「前夜」をドキュメンタリーとして描いている。「ニュース打破」という非営利独立メディアは、ユン・ソンニョルが検察総長候補者だった2019年から彼の不正を取材し続けていた。その頃、ユン・ソンニョルは「権力に屈せず闘う人物」として評価され、私もニュースなどを見て、そうしたイメージで受け止めていた。ということで、そんな人物に対して批判的に報じるメディアは、「選挙の妨害をしている」とも受け止められていた。ユン・ソンニョルもそれを「「フェイクニュース」と断じ続けた。
この映画を観て、記者たちの揺るがない姿勢に共感するのはもちろん、ある意味で驚きがあった。検察が記者たちに家宅捜査をする様子を、「ニュース打破」側が映像に収めていたからだ(写真)。「証拠を残す」という意味と同時に、そこには「出来事」をジャーナリスト(取材者)として、感情に走るのではなく、つとめて冷静にとらえようという、「ニュース打破」のスタンスを象徴しているようだ。
確かに、ある出来事や事件をドラマとして描くと、訴えたいことなどが強調することができ、それによって感動、共感を与える。一方、このようなドキュメンタリーは「起こったこと」を淡々と綴り、観る側に「考える時間・空間」を与えてくれる。
〈内容〉ユン・ソンニョルが検察総長候補者に指名された2019年から彼の不正を追及してきた非営利独立メディア「ニュース打破」は、ユン政権によるメディア弾圧の格好の標的となった。ソウル中央地検は、2022年の大統領選挙で「ニュース打破」がユン候補を不利にする〝フェイクニュース”を流したとして「大統領選挙介入世論操作特別捜査チーム」を編成。2023年9月14日の朝、「ニュース打破」本部と記者2名の自宅への家宅捜査が行われた。ちょうどその日は、検察の「特殊活動費」に関する記者会見が行われる日だった。しかし「ニュース打破」はこれに屈せず、自ら受け続ける言論弾圧をキャメラに記録し、さらなる調査報道と法廷闘争によってユン・ソンニョル政権を追い詰めていく…。
〈出演〉ユン・ソンニョル、キム・ヨンジン、ハン・サンジン、〉ポン・ジウク
〈スタッフ〉監督・キム・ヨンジン。脚本・チョン・ジェホン。プロデューサー・チャン・グァンヨン。撮影 ・シン・ヨンチョル。編集・ユン・ソクミン。企画・ニュース打破。製作・ニュース打破フィルム
2025年/111分/韓国/ドキュメンタリー。配給・アギィ。協力 岡本有佳。
写真(C)KCIJ-Newstapa