「ホウセンカ」

2025年10月10日公開

死期が近いヤクザが小さな花=ホウセンカを相手に、これまでの人生をかたっていく。そんな不思議な設定も、アニメーション映画で表現すると〈違和感〉もないし、彼の波乱に富んだ人生にどんどん引き込まれていき、ラストが胸に迫る。テレビアニメ「オッドタクシー」を手掛けたクリエイターの木下麦、此元和津也と。「映画大好きポンポさん」「夏へのトンネル、さよならの出口」を手掛けた制作スタジオ・CLAPが作り上げたオリジナル作品。失礼ながら、そうした知識はなかったが、さっそく、これらの作品を観たくなった。
物語は無期懲役囚の阿久津が、小さな植木鉢に入ったホウセンカに語り掛ける形で進行。年老いた阿久津を小林薫、若き日の彼を戸塚純貴が。阿久津と一緒に暮らす那奈を宮崎美子と満島ひかりが、声の出演をしている。
ヤクザをしていた阿久津は息子の健介がいる那奈と暮らしている。そんな様子を、庭に咲くホウセンカがずっと見ていた…。那奈が彼のことを「アンタ」などではなく、「阿久津さん」と呼ぶところに夫婦でもない2人の関係性を象徴している。一方、「仕事がうまくいけば幸せになれる」と阿久津は、アウトローな世界で懸命に〝成りあがって〟いこうとする毎日をおくっていた。そんな様子を、庭に咲くホウセンカがずっと見ていた。あることで大金が必要になった阿久津は兄貴分に相談し、悪事に手を染める。車中で2人が話すシーン。強がりをみせている兄貴分がタバコを挟む指がかすかに震えている?! 私にはそう見えたが、もしが正しいすると…。実写なら意識、無意識にかかわらずそんな映像が撮れるけれど、アニメならむしろ手間がかかること。これは勘違いだとしても、そんなことを想像してしまうほど、ディテールにこだわった描写。ストーリー展開が続く。また、3人で眺める花火、阿久津がこだわる方眼紙が象徴、伏線になっているのもいい。
巨額を投じた大作、派手なアクション映画に話題いきがちななか、味わいのあるこんな映画もいい。
〈ストーリー〉「ろくでもない一生だったな」。無期懲役囚の老人・阿久津が独房で孤独な死を迎えようとしていたとき、声を掛けたのは、人の言葉を操るホウセンカだった。〝会話〟の中で、阿久津は自身の過去を振り返り始める。「お前たちが来た日のこと、よく覚えてるぜ」
1987年夏。海沿いの街。しがないヤクザの阿久津は、兄貴分として慕う堤の世話で、6歳年下の那奈と、ホウセンカが庭に咲く素朴なアパートで暮らし始めた。生まれたばかりの那奈の息子・健介も一緒だ。縁側からは、大きな打ち上げ花火が見える。3人は、慎ましくも幸せな日々を送っていた。「退路を断ったもんだけに大逆転のチャンスが残されてんだよ」やがて土地転がしのシノギに成功し羽振りがよくなった阿久津は、享楽的に過ごし家を顧みなくなる。
そんなある日、事態は一変する。阿久津は大金を工面しなければならなくなり、
堤と共に組の金庫にある3億円の強奪を企てるのだった。
〈キャスト(声)〉小林薫、戸塚純貴、満島ひかり、宮崎美子、安元洋貴、斉藤壮馬、村田秀亮(とろサーモン)、中山功太、ピエール瀧。
〈スタッフ〉監督・キャラクターデザイン・木下麦。原作・脚本・此元和津也。企画・制作・CLAP。音楽・cero 、髙城晶平、荒内佑、橋本翼。演出・木下麦、原田奈奈。コンセプトアート・ミチノク峠。レイアウト作画監督・寺英二。作画監督・細越裕治、三好和也、島村秀一。色彩設計・のぼりはるこ。美術監督・佐藤歩。撮影監督・星名工、本䑓貴宏。編集・後田良樹。音響演出・笠松広司。録音演出・清水洋史。制作プロデューサー・伊藤絹恵、松尾亮一郎。宣伝・ミラクルヴォイス。配給・ポニーキャニオン。製作・ホウセンカ製作委員会。

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