「キムズビデオ」
       2025年8月8日公開

 仕事部屋はDVDやCDはもちろん、ビデオカセット、レコード。カセットテープにあふれている。なかでも、2025年問題でビデオカセットは〈寿命〉に近づいているようなのだが、DVD化されていないソフト(映画)などがあって、捨てられないでいる。この映画はそんなことは比較にならないほど壮大!かつてニューヨーク・イーストビレッジに、5万5000本を揃えした
「キムズビデオ」というレンタルビデオ店があった。マニアックな作品が多く、ジャン=リュック・ゴダールの「映画史」海賊版は、ゴダールからレンタル差し⽌めの通告が届き、FBIに押収されたそう。オーナーは韓国からアメリカに渡り、下隅を経て出世したキム・ヨンマンという人物。この映画は彼が持っていた膨大なビデオが、イタリア・シチリアの片田舎に寄贈されたが、雨ざらしの倉庫に眠いっているのを〝救出〟するまでを描いたドキュメンタリー。店の常連だったデイヴィッド・レッドモン監督は、その経緯、突撃取材をまじえて描いている。「ゴッドファーザー」など名作もあるが、題名も知らない作品もたくざんコラージュされていて、映画マニアぶりも披露している。誰にも観られることなく倉庫に眠るビデオパッケージ群も映し出されるなか、邦画では、当時あまり話題にならなかった鈴木清順監督の「悲愁物語」(1977年)があるのもおもしろい。
 なぜ、鳴り物入りでシチリアに引き取られたビデオが、こんな状況になったのか?そこには、新旧のシチリア市長の国家、マフィアへのすり寄りなど、政治的、社会的な背景も浮彫になる硬派なドキュメンタリーともいえる。 
 後半は、その脱出作戦で、こちらは「スパイ大作戦」(テレビ版)などのようなドラマを見るような展開。大人同士の落としどころが見つかる。監督たちが、「映画の“精霊”たち」に導かれという意味を込めて。アルフレッド・ヒッチコックやチャールズ・チャップリン、ジャン=リュック・ゴダール、ジャッキー・チェンたちの面をかぶって作戦を実行するあたり、痛快ではあるが、ちょっと作為的に思えたのは惜しい。
 作品の中心である、キムは人当たりようさそうではあるが、謎を秘めた人物。あの「市民ケーン」(1941年)の新聞王をほうふつ、キムにとって、膨大なビデオが、「ローズバッド」(バラのつぼみ)だったのだろう。
〈ストーリー〉ニューヨークの映画ファンたちが通い詰めたレンタルビデオショップ「キムズビデオ」。そこは、5万5000本もの貴重かつマニアックな映画の宝庫だった。 時代の変遷で閉店になった2008年、経営者のキム・ヨンマンは、価値ある膨大なコレクションをイタリアのシチリア島にあるサレーミ市に、収蔵・管理、ならびに会員が引き続きそのコレクションにアクセスできる事を条件に譲渡することを決意、コレクションは長旅を終えシチリア島へ到着した。しかし数年後に「キムズビデオ」元会員であるデイヴィッド・レッドモン(この映画の監督)が現地を訪れると、活用されずホコリだらけの湿った倉庫でひっそりと息を潜める映画たちを発見。彼は倉庫から助けを求める映画たちの“声”にかき立てられ、彼らを救うべく、警察署長や当時の市長への取材、その陰で暗躍するマフィアへと追跡を続ける。様々な過去の名作映画がデイヴィッドに啓示を与える。そしてついに彼は、映画たちを救うために荒唐無稽な奪還作戦を決意した。
〈出演〉キム・ヨンマン(ビデオ店オーナー)、ヴィットリオ・ズカルビ(かつてのサレーミ市長 2008~2012)、ドミニコ・ヴェヌーティ(サレーミ市長)、ジュゼッペ・ジャンマリナーロ(マフィアとの繋がりが疑われる謎の人物)、ディエゴ・ムラーカ(自治体の警察署長)、エンリコ・ティロッタ(キムズビデオの管理人/ミュージシャン)、レオパルド・ファルコ(マフィア撲滅委員会 会長)ほか。
〈スタッフ〉監督・編集・アシュレイ・セイビン、デイヴィッド・レッドモン。撮影・デイヴィッド・レッドモン。音楽・エンリコ・ティロッタ。録音・デイヴィッド・レッドモン、マチュー・デボルド。共同編集・マーク・ベッカー。音響・アグネス・ライカート、マルセイユ・ミックス・ア・ロットフェアユース。弁護士・ナイジェル・アッバス(アッバス メディア ロウ法律事務所、ケイ・マライ、バロン・ハリス、(ハーリー法律事務所)提供・Carnivalesque Films。アメリカ/2023年/英語、韓国語、イタリア語/88分/カラー© Carnivalesque Films 2023
提供:ミュート、ラビットハウス 配給:ラビットハウス、ミュート

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