「ルノワール」
2025年6月20日から、大阪ステーションシティシネマなどで公開
2022年公開の『PLAN75』がカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、初長編作品に与えられるカメラドールの次点に選ばれた早川千絵監督の最新作。想像力豊かな幼い主人公が、父の闘病に伴走する姿が瑞々しいタッチで描かれている。
主人公は小学5年生のフキ。両親と3人で平凡だが恵まれた生活をしていたが、ある時父親がガンに侵される。フキは小学生なりに父親の病状を理解するが、放課後は苦しい現実から空想の世界に逃げ込んで行く。
劇中ではフキが授業で奇妙な作文を書いたり、仲の良い友達に意地の悪いことをする。大切な人の闘病という苦しい出来事の前に、彼女の内面がいかに混乱しているかを表現しているのだが、フキは殆ど嬉しい悲しいを顔に出さない。アメなど舐めながらケロっとしている小学生が実は苦悩を抱えているという演出はリアルだ。ゆっくりと父という存在を失っていく過程で、彼女は記憶の中の父と遊びその存在を心に焼き付けていく。
ひどい年齢差別がまかり通る近未来を描いた前作『プラン75』と同様に、本作も穏やかな日常のすぐそばに断崖絶壁の気配を感じさせずにはおかない。しかし死の予感の中で主人公が英語を習得していくエピソードからは、閉じた世界から外の世界へツルを伸ばす植物のような生命力が感じられ、先鋭的な前作に比べて早川千絵監督のロマンティシズムが前面に出た形だ。
大人と子供の境界線上に居る11歳の危なっかしさを、本作でデビューの鈴木唯が体現し、出番の少ないリリー・フランキーが父親役に扮して深い印象を残す人間ドラマである。母親役に石田ひかり、友達の母親役に西原亜希。
(2025年/日本・フランス・シンガポール・フィリピン)
配給 ハピネットファントム・スタジオ
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