「プーチンの愛国教室」
   2026年10月3日からテアトル梅田ほか全国順次
 ロシアの小さな田舎町カラバシュの学校を舞台にしたドキュメンタリー映画だ。ウクライナ侵攻開始を境に、ロシアの教育カリキュラムの軍事色が鮮明になり、生徒達の日常生活が大きく変化していく課程を見事に捉えた作品である。
主役はカラバシュ第一初等・中学校の教師、パヴェル・タランキン。学校の映像記録係でのびのびとした性格、生徒からも人気のある彼は、職場を急に息苦しく感じ始めた。2022年2月のウクライナ侵攻から、国は生徒達に、戦争を肯定的に伝える授業を奨励し始め、そういう授業をする教師が評価されるようになったのだった。
 パヴェルのカメラは生徒達の表情を追い、カメラの前で自由な意見が言えなくなっていく様子を切り取っていく。パヴェル自身の姿も映像の中に登場させ、1人の青年が悩み、怒る姿を観客に見せていく手法は、マイケル・ムーア監督の初期作品を彷彿とさせ、反骨精神にあふれる。
歴史を振り返ってみても第二次大戦時は、ドイツの少年少女が総統を称える詩を暗唱させられ、日本の少年少女も政治、軍事的スローガンを頭につめ込まれていたという。その後、成長してからの彼らの苦しみはどれほどのものだっただろう。
パヴェル・タランキンが撮った現在のロシア国内の変化は、不安をかき立てるが、教育現場の変化に悩むパヴェルの感覚は、この上なくまともで、作品の救いとなっている。パヴェル本人も、また関係者も危険な橋を渡ることになる作品を、どのように制作したのか、と思ったが、本作の制作にあたっては、制作会社はBBCと協力し、取材対象者の安全対策のために、厳格な倫理規定と編集ガイドラインを策定していたという。ヨーロッパを拠点に活動するドキュメンタリスト、デヴィッド・ボレンスタインとの共同監督であったことも大きく、2026年のアカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞している。
(2025年/90分/デンマーク・チェコ)
配給 トランスフォーマー
©2025 made in copenhagen Aps, Pink Productions s.r.o.
監督・・・・・・・・・・・・デヴィッド・ボレンスタイン、パヴェル・タランキン
製作・・・・・・・・・・・・ヘレ・フェイバー、ラドヴァン・スィーブルト、アルジュビェタ・カラースコヴァー、ペトラ・ドベショヴァー
撮影・・・・・・・・・・・・パヴェル・タランキン、ほか匿名
原題:Mr. Nobody Against Putin/デンマーク王国大使館後援/協力:チェコセンター東京
公式サイト :https://transformer.co.jp/movie/mrnobody

error: Content is protected !!