「藁にもすがる獣たち」
    2026年9月25日、T・ジョイ梅田ほか全国ロードショー
 劇中のスクリーンに映るのは、菅原文太さん主演の「仁義なき戦い」。そこにビャーーっと血しぶきが飛ぶ。一体、何があったのか?

 主人公は、チャンネル登録者数が2ケタの大学生ユーチューバー佐藤寛治(鈴鹿央士)。祖母と2人暮らしの彼が、バイト先のネットカフェで清掃中、怪しげなボストンバッグを発見。バッグのファスナーを開けると、な、なんとそこには帯封がされた札束群、計1億円。悪いこととは知りながら、恐る恐るバッグを家に持ち帰る。可愛がって育ててくれたおばあちゃん(風吹ジュン)は、最近認知症が出始めた様子。彼はバッグを押し入れの天袋に隠した。
 一方、生活安全課の不良警官・江波戸良介(成宮寛貴)は、元カノの店の開業資金にヤクザの親分(岩松了)から多額の借金をして窮地に。そんな彼の元に大金の話が転がり込む。
 夫からDVを受け、常に傷だらけの主婦(MEGUMI)は、夜の街で偶然知り合った女性し~な(森七菜)から保険金がらみの計画を持ち掛けられた。
 人生詰みの男女が、1億円入りのバッグをめぐって、だましだまされ、奪い合いのバイオレンス。濃すぎるキャラの登場人物に、スピード感あふれるカット、次の展開が読めないストーリーと、この作品は、私たちの頭脳を目まぐるしく回転させ、観客自身が散りばめられたシークエンスをパズルのように組み立ててこそ、面白さが増していきます。
 スクリーン全体にファスナーが映し出され、それを開けることで場面が変わるポップな演出も、本作を理解する大きなヒント。
今作で新境地を開いた鈴鹿央士さん、最初は誰かわからなかったほどの変貌ぶりで気炎を上げる成宮寛貴さん。圧倒的存在感で振り切った演技を見せる森七菜さん、幸薄そうな主婦役MEGUMIさんの巧演など、俳優陣の気迫も見逃せません。
そして、菅原文太さんが血まみれになるエピソードは、約65年の歴史に幕を下ろした閉館直後の丸の内TOEIでのロケ。映画館に黄色い車が突っ込み、「仁義なき戦い」を見ていた満員の観客の阿鼻叫喚。劇場内の椅子が飛び、プロレスさながらの肉弾戦に思わずニヤリとさせられます。映画ファンにはこのうえなく嬉しい怒涛のクライマックスです。
2020年に韓国でも映画化された、江戸川乱歩賞作家・曽根圭介さんの同名小説を、城定秀夫監督が鮮やかな手腕で見事に立体化。
夏の疲れと、日々のストレスから解放される出色のノンストップ・サスペンスです。
〈スタッフ〉監督・城定秀夫。原作・曽根圭介。脚本・小林靖子、城定秀夫。エグゼクティブプロデューサー・和佐野健一、YOSHI。企画プロデュース・石川啓。プロデューサー・丸山格。Co.プロデューサー・小池賢太郎。音楽プロデューサー・津島玄一。ほか
コピーライト・©曽根圭介/講談社©2026「藁にもすがる獣たち」製作委員会

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