「ナギダイアリー」
     2026年9月25日公開
『淵に立つ』(2016)でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞するなど、世界的に評価の高い深田晃司監督の最新作は、平田オリザの代表作「東京ノート」にインスパイアされたオリジナル作品だ。
 主人公は、彫刻家の寄子(松たか子)。芸術を愛する寄子は、美しい自然に囲まれ、美術館のある町・ナギでコツコツと作品を彫っている。そんな寄子が、ある日、彫刻のモデルとして友梨(石橋静河)を自宅に招いた。友梨は、かつて寄子の弟と結婚していた女性だが、離婚した後もずっと交流を続けていた。田舎でストイックに創作に打ち込む寄子と、都会で多忙な建築家として飛び回る友梨。2人の胸の内にはそれぞれの孤独があり、その孤独の正体が軽妙な会話の中で浮き上がってくる。登場するのは寄子たちの他にも、自分探しに夢中な高校生・春樹(川口和空)とその親友の圭太(藤原聖)や、人付き合いが苦手な市役所職員の好浩(松山ケンイチ)など、いずれも、ひとクセある面々。
静かでのどかな架空の舞台・ナギは、どこかで誰かが噂をすれば、あっという間に広がるだろうな、という雰囲気を持つ小さな町である。そこに根を張って、自分らしく生きるということは、どういうことなのか。多様性をキーワードに思い浮かべるまでもなく、主人公の行動から想像は膨らんでいく。
寄子が劇中、ぼそっと呟いているように、写真でも人物彫刻は完成させられる。写真で済むのに、わざわざ遠方から友梨を呼んだのには意味があり、演じる松たか子が、寄子の心の機微を繊細に表現した。衝撃的なスペクタクルシーンがあるワケでは無いが、日常の中で起きる悲喜こもごもを描く手法は、フランスの名監督・エリック・ロメールに似ていて詩的。この秋、じっくり味わいたい人間ドラマである。
(2026年/110分/日本・フランス・シンガポール・フィリピン)
配給 スターサンズ
■コピーライト:© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.

error: Content is protected !!